【藤田俊哉の目】ボスニアにあって日本になかった質のスピード。吉田を振り切った“爆発的スピード”が欲しい

2016年06月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

ボスニア戦はハリル体制になって最もスリリングな見応えある試合だった。

日本はジュリッチ(18番)に2ゴールを許し手痛い敗戦を喫した。ゴール前で相手の一瞬の隙を突く爆発的なスピードは、日本が見習うべきものだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[キリンカップ]日本代表1-2ボスニア・ヘルツェゴビナ代表
6月7日/市立吹田サッカースタジアム
 
 6月7日に行なわれたキリンカップの決勝で、日本はボスニア・ヘルツェゴビナに1-2の逆転負けを喫した。ホームでの大会だから、ぜひともタイトルを手にして欲しかったのが正直な気持ちだが、その内容をとりわけ攻撃面だけを見れば、最後まで非常にエキサイティングなゲームだった。
 
 ハリルホジッチ体制になってから、最もスリリングな試合だったんじゃないかとも思うくらいだ。もちろん本田、香川の不在で、展開の読みにくい90分間だったことはあるにしても、手に汗を握ってテレビ観戦していたのは久しぶりだった。
 
 そのような内容が生まれた要因はどこにあるのか。その理由を探れば、やはりスピード感のある試合展開にあったことが言えるだろうね。ハリルホジッチ監督は日本の試合を「各駅停車のようだ」と表現していたコメントを目にしたことがあるが、この日はまったくもってその表現は当てはまらなかった。
 
 チームとして特に前半はボールがよく走っていたし、なにより全体的にスピード感があった。いわゆる「前への推進力」が、いままでの試合のなかで一番出ていたように見えた。
 
 もっとも、ボスニア・ヘルツェゴビナが、日本がワールドカップ2次予選で戦ったアジアのチームのように、守備的な戦いをしてきたら、こうしたスリリングな展開になっていなかっただろう。しっかりと相手チームも攻める姿勢を打ち出してきて、まさにスピーディな攻防を繰り広げたからこそ、見応えのあるフットボールになったと思う。
 
 スピードといっても、いろんなスピードがあるが「ゲーム・スピード」もしくは「背後への飛び出し」という点では日本の方が上だと感じたが、「カウンター・スピード」と「スイッチを入れた時の一瞬のスピード」という点では、ボスニア・ヘルツェゴビナが上回っていた。
 
 もっとわかりやすく言えば、チームとして"ここぞ"という場面での爆発的スピードが、ボスニア・ヘルツェゴビナにはあった。結果としてそれが勝敗を分けた。
 
 決勝点となった2点目のシーンはまさに好例だろう。相手のスルーパスが出た瞬間、最も警戒していたジュリッチがゴール前へ勢いよく飛び出し、吉田のマークを振り切ってそのまま右足で逆転ゴールを決めた。守備陣がスルーパスへの反応が遅れて、マークに対応しきれなかった吉田のプレーには課題も残るが、ゴールに向かう"爆発的なスピード"を感じさせた攻撃だった。
 

次ページ技巧派の宇佐美に加えてスピード系の浅野というオプションが増えたのは好材料だ。

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