【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の七十三「リオ五輪OA枠――今はまだ頼りない若い選手の“変身”に懸けてみては?」

2016年06月01日 小宮良之

大久保、長友を招集できるなら、それに越したことはないが…。

足りない部分をOA枠で補うという考えは決して間違ってはいないが、何が日本サッカーにとって真の利益となるのかを、最後にもう一度確認するべきだろう。 (C) Getty Images

 トゥーロン国際大会、U-23日本代表は1勝3敗に終わり、グループリーグで敗退した。
 
 日本が敗れたパラグアイ(1-2)、ポルトガル(0-1)、イングランド(0-1)は、いずれも下のカテゴリーの選手の多かった。にかかわらず、試合のマネジメントと精度の部分で、日本は大きな差を見せつけられた。
 
 スコアは全て1点差だったとはいえ、その差は明白。流れを読む目と確実な技術で、得点を叩き 込まれた。日本は攻撃に入るところでの怯みを突かれ、敵陣に迫っても、ゴールの枠すらなかなか捉えられなかった。
 
「オーバーエイジ(OA)枠が必要!」という声が高まるのは、自然の流れだろう。
 
 とりわけ、FWと左SBはめぼしい選手が見当たらない。大久保嘉人(川崎フロンターレ)、長友佑都(インテル)への打診は必然と言える。
 
 また、CB奈良竜樹の負傷も戦略に関わる大きな痛手で、ガーナ戦の後半やトゥーロンでは最終ラインが深くなってしまい、攻撃に厚みを加えられなかった。
 
 個人的には、ロンドン・オリンピックに出場した鈴木大輔(ジムナスティック・タラゴナ)をOAに推したいのだが……。
 
 リオデジャネイロ五輪に向けては、考えれば考えるほど不安要素が多く、OAの存在感は増すばかりだ。
 
 しかし、OA招集は簡単な話ではない。
 
 そもそも、リオ五輪についてはFIFAの拘束力がないため、OAの海外組の招集は困難。五輪と並行して進行するJリーグのクラブも、拒否権はないものの(3名まで招集可能)、おいそれと主力選手を譲り渡すわけにはいかない。OAとして欲しい戦力ほど、交渉は難航するだろう。
 
 その一方、五輪に参加できるのは18人と少ない(ワールドカップは23人)。「ひとりでも多くの若手が大舞台を経験することが将来の布石になる」という見方もあるだろう。
 
 北京五輪では、大久保の怪我や遠藤保仁の病気でOAを使わずに惨敗を喫したが、ここから岡崎慎司、本田圭佑、長友ら、多くの日本代表選手を輩出した。勝負を度外視するべきではないものの、五輪までを育成年代とするなら、何が日本サッカーにとって有益か、も問われる。
 
 大久保、長友らファーストチョイスを手にできるなら、それに越したことはない。しかし、そうでないなら、五輪世代だけで戦うのも選択肢だろう。

次ページ所属クラブで経験を積んでいる選手たちは「援軍」となり得る。

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