新戦力をどう早くフィットさせるか
指揮8年目を迎えた鬼木監督。今季は様々なトライもしている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)
新たなフォーマットとなる"ACLエリート"へ、川崎の鬼木達監督が抱える想いとは。今季は昨季以上にリーグ戦での苦戦が続き、降格圏にも近づいているなかで、指揮官はどうチームを導き、どんな志を持っているのか。自身7度目のACL挑戦を前に語ってもらったインタビューの第3弾だ。
――◆――◆――
三笘薫、守田英正、田中碧、旗手怜央、谷口彰悟ら川崎から海外へ羽ばたき、森保ジャパンで活躍するタレントは数多く、さらに今季の開幕前には山根視来、登里享平、山村和也らチームの根幹を担った選手たちが新たな挑戦として移籍。
加えて鬼木達監督の右腕であった寺田周平コーチがJ3の福島の監督に就任するなど、コーチングスタッフも大幅に入れ替えて2024年の川崎は船出を切った。そのなかで鬼木監督はどうアプローチをしてきたのか。
「今年難しかったのは、新しい戦力をできるだけ早くフィットさせようというところで、本人たちの良さを出しやすいように、戦い方に幅を持たせて、彼らの個性をどんどん出せるような環境作りを意識していた部分はありました。
ただ、そうするなかでも、自分たち、川崎のサッカーはこういうものだ、というこだわりの部分が薄れる恐れもあったので、悩みながらのチャレンジでした。
そのなかで、じゃあフロンターレの技術の基準と姿勢の基準を示せる人数がどれほどいるかというと、オフにベテラン3人の移籍もあって、例えばヤス(脇坂泰斗)やアキ(家長昭博)やユウ(小林悠)はキャンプにいましたが、(大島)僚太や(車屋)紳太郎は怪我をしてしまい、ベテランというか、新しい選手たちにアドバイスできる選手が限られてしまった。もちろん僕は言葉では伝えられますが、一緒にプレーすることで伝えられるものは全然違うので。
その辺りで中途半端とまではいかないですけど、少し色んな人の良さを出そうと意識し過ぎて、そのまま勝ちながら修正できれば一番良かったですけど、そこでちょっと勝てなかった時に、やっぱり立ち返る場所をもっときちんと持たなきゃいけなかったという想いはあります」
個性を活かしながらチームのベースも改めて築いていく。なかなか難易度の高いアプローチだったのだろう。
「そこが一番難しかったのかもしれないですね。個性だけを見れば良い面はすごく多いのですが、チームとしてのつながりとなると、少しテンポの部分だとか、見るタイミングなどが、ちょっとしたズレと言いますか、そういうところはあったのかなと感じています。
ただ、個性を出せる状況のほうが、多くのことを気持ち良く学べるとも思っていましたし、学ぶほうが強すぎて個性を抑えすぎると、皆悩むケースが多いということはここまでの経験としてありました。
でも結局、最後にチームとして、こういうことをやろうとした時に、技術、頭、思考をしっかり持っていないと上手くいかないわけで、自分自身がよりアプローチするべきだったのかなっていう気持ちです。
多少、窮屈になっても、少し導いてあげるというか、そういうのがもうちょっとあっても良かったのかなと。それこそ僕が監督をやり始めた時は、多少窮屈と思われても、1年目の阿部(浩之)ちゃんやアキ(家長昭博)も、これがフロンターレのサッカーだよと、そこを窮屈に思われても伝えていった部分があった。
一方で今年は選手の幅を持たせようとしすぎて、基準が分からない選手もいたのだと思います。そこは自分の反省です」
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加えて鬼木達監督の右腕であった寺田周平コーチがJ3の福島の監督に就任するなど、コーチングスタッフも大幅に入れ替えて2024年の川崎は船出を切った。そのなかで鬼木監督はどうアプローチをしてきたのか。
「今年難しかったのは、新しい戦力をできるだけ早くフィットさせようというところで、本人たちの良さを出しやすいように、戦い方に幅を持たせて、彼らの個性をどんどん出せるような環境作りを意識していた部分はありました。
ただ、そうするなかでも、自分たち、川崎のサッカーはこういうものだ、というこだわりの部分が薄れる恐れもあったので、悩みながらのチャレンジでした。
そのなかで、じゃあフロンターレの技術の基準と姿勢の基準を示せる人数がどれほどいるかというと、オフにベテラン3人の移籍もあって、例えばヤス(脇坂泰斗)やアキ(家長昭博)やユウ(小林悠)はキャンプにいましたが、(大島)僚太や(車屋)紳太郎は怪我をしてしまい、ベテランというか、新しい選手たちにアドバイスできる選手が限られてしまった。もちろん僕は言葉では伝えられますが、一緒にプレーすることで伝えられるものは全然違うので。
その辺りで中途半端とまではいかないですけど、少し色んな人の良さを出そうと意識し過ぎて、そのまま勝ちながら修正できれば一番良かったですけど、そこでちょっと勝てなかった時に、やっぱり立ち返る場所をもっときちんと持たなきゃいけなかったという想いはあります」
個性を活かしながらチームのベースも改めて築いていく。なかなか難易度の高いアプローチだったのだろう。
「そこが一番難しかったのかもしれないですね。個性だけを見れば良い面はすごく多いのですが、チームとしてのつながりとなると、少しテンポの部分だとか、見るタイミングなどが、ちょっとしたズレと言いますか、そういうところはあったのかなと感じています。
ただ、個性を出せる状況のほうが、多くのことを気持ち良く学べるとも思っていましたし、学ぶほうが強すぎて個性を抑えすぎると、皆悩むケースが多いということはここまでの経験としてありました。
でも結局、最後にチームとして、こういうことをやろうとした時に、技術、頭、思考をしっかり持っていないと上手くいかないわけで、自分自身がよりアプローチするべきだったのかなっていう気持ちです。
多少、窮屈になっても、少し導いてあげるというか、そういうのがもうちょっとあっても良かったのかなと。それこそ僕が監督をやり始めた時は、多少窮屈と思われても、1年目の阿部(浩之)ちゃんやアキ(家長昭博)も、これがフロンターレのサッカーだよと、そこを窮屈に思われても伝えていった部分があった。
一方で今年は選手の幅を持たせようとしすぎて、基準が分からない選手もいたのだと思います。そこは自分の反省です」
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その点は顔ぶれが変わったコーチングスタッフへの意識付けにも共通する部分があったのだろう。
「今年は選手もコーチも多く変わったので、個性を活かすことからスタートし、その分、基準が分かりづらくなってしまった気がします。コーチに対しても、もっと自分の考えていること、頭のなかを見せて要求を深めたほうがみんなにとって分かりやすかったのかもしれません。
そういう意味ではコーチも大変だったと思います。例えば僕も、ツトさん(高畠勉)、相馬(直樹)さん、風間(八宏)さんらの下で、監督の目指す基準みたいなものを早く把握しようと努めていました。そこを理解しないと、自分が選手を褒めようと思っても、もしかしたら、そのプレーは監督にとっては目指すものではないのかもしれない、と考えて声をかけられないからです。
だから今回も新しいスタッフらと、初日の練習の何日か前に集まって、これが止める・蹴るの基準で、これが外すの基準で、などと、確認し合いました。実際にトレーニングが始まると、スピード感が違ったりするので、難しさはあったかもしれないです。ただ、最近はそこの基準を、みんなで共有できるようになっています。そういう意味でもチームが変わっていく時には選手、スタッフにも時間が必要で、時間の重要性を感じています」
選手、コーチ陣とともに成長していく日々。そう考えると、共通認識が高まってきたこのタイミングでACLに挑めるのも大きいのかもしれない。
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そういう意味ではコーチも大変だったと思います。例えば僕も、ツトさん(高畠勉)、相馬(直樹)さん、風間(八宏)さんらの下で、監督の目指す基準みたいなものを早く把握しようと努めていました。そこを理解しないと、自分が選手を褒めようと思っても、もしかしたら、そのプレーは監督にとっては目指すものではないのかもしれない、と考えて声をかけられないからです。
だから今回も新しいスタッフらと、初日の練習の何日か前に集まって、これが止める・蹴るの基準で、これが外すの基準で、などと、確認し合いました。実際にトレーニングが始まると、スピード感が違ったりするので、難しさはあったかもしれないです。ただ、最近はそこの基準を、みんなで共有できるようになっています。そういう意味でもチームが変わっていく時には選手、スタッフにも時間が必要で、時間の重要性を感じています」
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