【FC東京】鳥栖と痛恨のスコアレスドロー。今だからこそ考えるフィッカデンティの退任

2016年05月14日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

両指揮官のコントラストが、この試合を物語っていた。

古巣の味の素スタジアムに帰還したフィッカデンティ監督と、城福監督が握手。試合はスコアレスドローに終わった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 試合後、満足そうな表情で会見場に現れたのは、鳥栖のフィッカデンティ監督だった。昨季までFC東京を率いていたミステルは少し笑顔で「お久しぶりです」と言った後、こう続けた。
 
「互いにスペースを潰し合うゲームになりました。前半の最後、高橋(秀人)選手のミドルがクロスバーを叩いたところ、クロスバーをたたかれたところから、その後ピンチになったところを除けば、どちらもほぼシュートチャンスがないような試合になってしまった。
 
 昨季まで一緒に戦っていた選手がたくさんいて、彼らの力は知っていました。(FC東京)がどれだけ堅いチームかというのは分かっていたんですが、崩すのは困難だった」
 
 そのコメントからは悔しさよりも愛情が感じられた。少なくとも、この日のフィッカデンティ監督は機嫌が悪くなかった。「決定力不足をどうしたら解消できるか?」というニュアンスの質問に対しても、「なかなか良い質問をしますね。4か月前からそれを考えていますが、良い答が見つかりません(笑)」とリラックスしたスタンスで話していた。
 
 一方、ホームでスコアレスドローに終わったFC東京の城福監督は低いトーンで「勝ちたかった試合でした」と言った。
 
「勝点3を取れずに悔しいです。ただ、こういう試合展開で失点して、勝点ゼロで終わることだけは防げた。守備面はポジティブに捉えたいが、シュート2本に抑えてOKという状況ではない」
 
 悔しさが滲み出ているコメント。両指揮官のコントラストが、この試合を如実に物語っていた。城福監督は"フィッカデンティ超え"を果たせなかったと言っていい。
 
 この日の鳥栖は、昨季のFC東京と同じ4-3-1-2システムで臨んだ。トップ下には技巧派の鎌田(昨季のFC東京はここに同じくテクニシャンの河野などを配置していた)を起用し、堅守をベースとしたサッカーを展開していたのである。
 
 つまり、FC東京は"昨季の自分たち"と戦っているようなものだったのだ。しかし、結果的にツキにも見放されたジョーフク・トーキョーは低調なパフォーマンスに終始した。CBコンビの出来こそ良かったが、こと攻撃面に関しては……。
 
 昨季のFC東京は、確固たるフィニッシュブローを持っていた。武藤の決定力、太田のFKなど殺傷力抜群の一撃を備えていたのだが、今季は違う。確固たる得点源が見当たらず、場当たり的なアタックが多過ぎる。
 
 今季ここまでの戦いぶりを見るかぎり、フィッカデンティ→城福氏への政権交代が正解だったとはお世辞にも言えない。むしろ「あのままフィッカデンティに任せたほうが良かったのではないか?」と、そんな声があったとしても不思議はないだろう。
 

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