【EURO2016開催地を巡る旅】第6回:ニースとアリアンツ・リビエラ「ゴージャスなコートダジュール、鷲の巣村と花の香りへ」

2016年05月12日 結城麻里

最もスペクタクルな子鷲! スタジアムはとてもエコロジック。

ニースといえば、やはりこの景色。フランス人の好みはさておき、紺碧の海を満喫しなきゃ、もったいない! (C) REUTERS/AFLO

 前回はベルギー国境という最北端を訪ねましたが、今回は一気にイタリア国境近くまで南下しましょう。紹介するのは、有名なコートダジュール(紺碧海岸)を代表する街、ニース(人口約34万5千人)です。
 
 日本人にとってニースは、パリと並んでフランスを代表する"憧れの街"。でも、実はここ、1世紀半前までフランスではなく、サルデーニャ領でした。そのため、イタリア貴族文化の伝統を色濃く残しており、今では世界中の大金持ちやスターが集まるゴージャスな街となっています。
 
 意外かもしれませんが、偽りなく書くと、「イタリア色は好きだけど、派手に偉ぶったところが好きじゃない」というフランス人は少なくありません。
 
 とはいえ、魅力満載なのは間違いなし! 超豪華ホテルには泊まれなくても、ほんの少し映画の主人公になった気分に浸れることでしょう。そして、後に紹介するように、正真正銘の南仏の魅力もたっぷり味わえます。
 
――◇――◇――
 
 そんなゴージャス・シティーのフットボールクラブは「オランピック・ジムナスト・クラブ・ニース・コートダジュール」。通称「OGCニース」と呼ばれ、「エグロン」(子鷲)の愛称を持っています。
 
 栄華を極めたのは1950年代で、数々の国内タイトルを獲得した他、なんとあのレアル・マドリーを初めて打破したフランスクラブにもなりました。しかし、60年代以降は沈滞し、10数年前からやっと"リーグアンの中堅クラブ"に再定着しました。
 
 ところが今シーズン、このエグロンが凄いのです。パリ・サンジェルマンの後ろで何度も猛然と2位争いに乱入。一体、何が起きたのでしょう。実は、ハイクオリティーな育成センターから輩出された若手たちと、不死鳥のように蘇った天才が、ぴったり融合したのです。
 
 その天才とは、アテム・ベン・アルファです。
 
 4月22日の夜、あるテレビ討論番組で、こんなテーマが設定されました。
 
「ベン=アルファは、今シーズンのリーグアンで最もスペクタクルな選手か?」
 
 これに「ウィ!」と答えたのは、『レキップ』紙のエルベ・プノ記者で、「あれほどスペクタクルなドリブラーは、今のフランスにはいない」と強調しました。
 
 一方「ノン!」と答えたのは、『ル・パリジャン』紙のドミニク・セヴラック記者。「最もスペクタクルなのはやっぱりイブラ(パリSGのズラタン・イブラヒモビッチ)だ」と反論します。
 
 ところが、視聴者の74パーセントは、「ベン・アルファ」と回答。29歳のMFは、"イブラ越え"を果たしたのです。
 
 なにしろ、リラックスしている時の彼がボールを持つと、敵DF陣はまるで魔法にかかったように、スルスルと抜かれていきます。
 
 今、彼がEURO2016に出場できるか否かが、大きな話題になっています。ここニースで育成された"レ・ブルー"の現主将ユーゴ・ロリスとともに、大舞台に立てるでしょうか。
 
 そんなチームのホームスタジアムは3年前の9月、ゴージャスに生まれ変わりました。その名も「アリアンツ・リビエラ」。バイエルンの本拠地「アリアンツ・アレーナ」同様、ドイツの保険会社がネーミングスポンサーだからです。
 
 特徴は、自然光を最大限に取り入れた美しさと、エコロジックなコンセプト。1万3600平米もの屋根の覆いは100パーセント、リサイクル可能であり、3万5624人収容の多目的スタジアムです。さらには、国立スポーツ博物館まで併設されました。
 
 ここでは、優勝候補スペインとトルコ、イブラのスウェーデンとエデン・アザールのベルギー激突などが見られます。
 
"玉に瑕"なのは、当面の交通アクセスでしょうか。2年後にはトラムが新スタジアムまで延長されますが、それまではスタジアムに辿り着くのに、長い所要時間を要することになります。
 
 もっとも、EURO期間中は市内から直行バスが運行される他、電車で数分ほどの駅からも無料シャトルバスが頻繁に出る予定です。
 
 ここは南仏。あくせくせず、ゆとりを持って楽しみましょう。

次ページ憂いを忘れる紺碧の海と空、美味しい料理、そして美術館…。

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