湘南の新主将キム・ミンテの覚悟。山口監督の守備理論には「衝撃を受けた」【インタビュー前編】

2024年03月15日 岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

「湘南は今、変わろうとしている」

キム・ミンテは昨夏に鹿島から湘南にレンタルで加入すると、チームのJ1残留に寄与。完全移籍に移行した今季はキャプテンを務める。写真:滝川敏之

 2023年7月に鹿島アントラーズから湘南ベルマーレに期限付き移籍すると、3バックの中央で抜群の存在感を発揮。同クラブへの完全移籍を決断し、キャプテンに就任した今季、さらなる覚悟を背負って戦う30歳が胸中を明かしてくれた。

 本記事では、現在発売中の「サッカーダイジェスト24年4月号」に掲載したロングインタビュー「キム・ミンテ"熱さの根源"」の未公開エピソードを紹介する。

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 2月23日、湘南ベルマーレの2024年シーズンがスタートした。

 ホームでの川崎フロンターレ戦。チケット完売の神奈川ダービーで腕章を巻いたのは、今季からキャプテンを務めるキム・ミンテだ。

「キャンプ中の主将就任後、公式戦までは不安やプレッシャーはありませんでしたが、いざ開幕戦に出てみると、難しさを感じましたね。本来、試合中に味方に文句を言ったりもするのですが(笑)、それをできるだけ良い言葉に変えようとしたりだとか...」

 23年7月に鹿島アントラーズから期限付き移籍でチームに加わったキム・ミンテは、新天地で圧巻のパフォーマンスを披露し、今年1月に湘南への完全移籍を決断。昨季に14得点を挙げたFW大橋祐紀がサンフレッチェ広島へ、アカデミー出身のDF石原広教が浦和レッズへ旅立ったなか、頼もしいCBの残留は関係者を安堵させたはずだ。

「昨季も湘南でプレーして、素直に楽しかったし、気持ちが入ったんです。僕が来てから勝てる試合も増えて、サポーターと喜びを分かち合い、チームへの愛が深まるような感覚を味わった。完全移籍の決断は、難しくありませんでした」
【PHOTO】開幕戦から白熱の"神奈川ダービー"!先制許すも、脇坂、エリソン弾で逆転し白星発進!|J1第1節 湘南1-2川崎
 プロ入り後、初めて腕章を身につけてピッチに立った川崎戦は1-2で惜敗。ただ、彼個人は昨季の後半戦と変わらず見事な出来だったと言える。

 今季から4-4-2で戦うチームにおいて、キーワードは「コンパクト」だ。バランスの良さが魅力の同システムだが、距離感が開けば簡単に隙を見せてしまう。選手同士の間隔を狭めてブロックを敷き、相手の攻撃を跳ね返すには、最終ラインからの声による統率が必須だろう。

 システム変更について、新主将はこう捉えている。

「僕は鹿島や名古屋(グランパス)でも4-4-2をやっていたので違和感なくやれていますが、湘南は長年3バックをやってきたので、いきなり結果が出るかと言えば、難しいですよね。

 ただ、3-5-2にはすぐに戻れるはずです。これまでずっとやってきたし、メンバーもあまり変わっていないので。だから恐れることなく、定着するまでやり続ければ良いと思っています。最近、優勝するチームは4バックが多いじゃないですか。まだ優勝を語るには遠いかもしれませんが、その1歩目を踏み出したと捉えています」

 キム・ミンテは期待通りの声とジェスチャーで味方へ指示を送り、堅固な守備を構築した。2失点は悔やまれるかもしれないが、ひとつは相手のシュートを褒めるべきで、もうひとつはGKからのビルドアップを引っかけられた形。我慢が必要な時間帯は凌ぎ切れていた。

 本人も一定の手応えを感じているようだ。

「湘南は今、変わろうとしている。具体的には、システムと、若い選手の台頭。そういう意味では、キャンプで得た手応えを出せた試合だったかなと。相手が川崎だから課題が見えて当然の試合でしたし、開幕戦特有の雰囲気もある。難しい試合になると思っていた分、ポジティブに取れるシーンが多かったですし、今後、さらに良くなっていくはずです。そして、自分が面白いチームにしていかなければいけません」

 得た手応えは、さっそく結実した。2節の京都サンガF.C.戦では2-1で今季初勝利をを挙げた。3節のアビスパ福岡戦では、昨季ホーム&アウェーともに敗北を喫した相性の悪い相手に対し、敵地で勝点1をもぎ取った。

【PHOTO】負けられない戦いを選手たちとともに戦った湘南ベルマーレサポーター

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