「タケは歴史的前例を作った」契約延長の久保建英にソシエダ番記者が感服。一方で懸念する“最悪のシナリオ”とは?「何年も留まってくれるのを願っているが...」【現地発】

2024年03月13日 ミケル・レカルデ

契約を結んだとき、彼らの胸騒ぎは失望へと変わった

ここまで7ゴールを決めている久保。(C)Getty Images

 今を分析するには、後ろを振り返ることは有効な手段だ。いま起こっているすべての状況はどこから来ているのか、失敗から学ぶことができたのか、先入観や思い込みによって偏った見方をしていないのかを確認する。

 その意味で、タケ・クボ(久保建英)はレアル・ソシエダにおいて歴史的な前例を作った。今夏の獲得候補として名前の挙がる選手を巡り、懐疑的な見方が出てきた時は、我々はタケに起こったことを思い起こす必要がある。

 ソシエダは3度目の正直でタケを獲得した。前年のビジャレアル(後にヘタフェに移籍)に続いて、その2シーズン前にも所属したマジョルカとの争奪戦に敗れた2021年夏の時点で、タケに対して懐疑的な声はすでに存在していた。

 アノエタに来ないことが分かった時、多くの人々は安堵のため息をついた。そしてその翌夏、約650万ユーロという控えめな金額と引き換えに契約を結んだとき、彼らの胸騒ぎは失望へと変わった。
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 しかし評価が好転するのに時間はかからなかった。デビュー戦となったカディスとの開幕戦でタケは決勝点をマーク。ファンはすぐさま彼の競争心、クオリティ、単独で打開する力、パーソナリティの虜になった。マドリーで居場所を見出すことができず、レンタル移籍を繰り返していた選手が、これほどまでにスムーズに新天地に適応したことは特筆に値する。

「ラ・レアルは、サッカー選手としての自分の価値を証明することを手助けしてくれた。僕は良い時期を過ごしていなかったけど、成功に導く列車に乗せてくれた」

 両者が築いた相思相愛の関係は、タケが口にする感謝の言葉に表れている。

 タケは、ソシエダのクオリティを飛躍的に向上させた。1年目に9ゴール・9アシストをマークし、10シーズンぶりのチャンピオンズリーグ出場権獲得に大きく貢献した。

 さらにそのピッチ上での文句のつけようのない貢献に加え、天真爛漫な性格、流暢なスペイン語を駆使しての歯に衣着せぬ発言も注目を集め、瞬く間にチーム屈指の人気者になった。

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