スパーズが警察に捜査を要求した「ラザニア事件」とは? 血生臭い恐怖のバトルも――ロンドンのダービーこそイングランド・フットボールの真髄だ【現地発】

2024年03月26日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

とくにスリリングなのが「ドッカーズ・ダービー」

アーセナルとトッテナムが戦うノースロンドン・ダービーも注目の戦いだ。(C)Getty Images

 ロンドンに本拠を置くクラブは、現在プレミアリーグに7つ。1チームが1シーズンに戦うダービーマッチは12試合だ。こんなスケールのフットボールシティはロンドンの他にない。下部リーグまで含めたら、ロンドン・ダービーのない週末を探すほうが難しい。
 
 現役時代にトッテナム・ホットスパーとチェルシーでプレーし、この両チームを監督としても率いたグレン・ホドルは、ロンドン・ダービーのその数の多さに思わず嘆息したことがある。マンチェスター・ユナイテッドやリバプール、ニューカッスル・ユナイテッドという北のライバルはせいぜい2試合でそれが羨ましいと、言外にそう語ったのは、チェルシーでプレーヤー・マネジャーを務めていたときだ。
 
 同じ街のライバルと対峙するダービーは、特別な意味合いを持つビッグマッチだ。格上も格下もない。いつだって対等、本気の殴り合いだ。それを毎年のように10 回以上繰り返しているのがロンドンのクラブである。
 
 ロンドン・ダービーこそ、イングランド・フッボールの真髄と言えるだろう。ロンドン・ダービーがなければ、イングランド・フットボールではない。
 
 先日、アーセナルはロンドン・ダービーの通算成績を引っ張り出して、みずからを「キング・オブ・ロンドン」と称した。ウェストハム・ユナイテッドをホームに迎えた19節のダービーマッチの前だった。アーセナルは293試合で152勝を挙げていて、その勝利の数が史上最多だと喧伝した。
 
 皮肉だったのは、こうして「キング」を語ったアーセナルはウェストハムに0-2と完敗し、続けてフルアムにも負けてダービー2連敗を喫したことだ。ロンドン・ダービーとはかくも難しく、予測不可能で、だからこそ魅力的なのだ。
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 ロンドン・ダービーはそのすべてが熱い戦いだ。アーセナルとスパーズのノースロンドン・ダービーはもちろん、クイーンズ・パーク・レンジャーズ(QPR)とフルアムのウェストロンドン・ダービーも、サットン・ユナイテッドとウィンブルドンのサウスロンドン・ダービーも、激しく火花を散らす魅惑のロンドン・ダービーだ。
 
 そのなかでもとりわけスリリングでエキサイティングなのが、ウェストハムとミルウォールの「ドッカーズ・ダービー」だ。いや、剣呑で殺気立っていると表現すべきだろう。
 
 ともにテムズ川の港湾労働者(ドッカー)のクラブとして設立された両クラブは、下町のイーストロンドンという土地柄もあって当初から激しくやり合った。ミルウォールはその後、本拠地を移転したが、対立の構図は続き、気の荒い両サポーターはやがてフーリガンとして悪名を轟かせ、ドッカーズ・ダービーは血生臭い恐怖のダービーとして世間を震撼させることになったのだった。
 
 そんなドッカーズ・ダービーも、フットボールカレンダーから消えて久しい。ウェストハムが降格してチャンピオンシップ(2部)を戦った2011-12シーズンを最後に、FAカップでもリーグカップでも実現していない。プレミアリーグに定着して近年はビッグ6にも迫ろうかというウェストハムの背中は、チャンピオンシップに根を下ろしたままのミルウォールから遠ざかるばかりだ。
 
 この状況を好ましく思っているのが、街の治安を守るロンドン警視庁であることは言うまでもない。

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