「ドウアンはとても存在感があった」フライブルク指揮官の采配が的中。劇的勝利でEL16強入りに堂安律は「頑張ったかな」【現地発コラム】

2024年03月01日 中野吉之伴

「自分の得意なゲーム展開ではなかった」

ELベスト16進出に貢献した堂安。(C)Getty Images

 試合が始まったら監督ができることは限られると多くの指導者が言う。ジョゼップ・グアルディオラも、ジョゼ・モウリーニョも、ユルゲン・クロップも、ユップ・ハインケスも、ルイス・ファン・ハールも、カルロ・アンチェロッティも、みんな似たようなことを口にしている。

 監督として試合までにあらゆることを想定した準備をし、試合となったらあとは選手を信じてピッチに送り出す。今年1月に死去した皇帝フランツ・ベッケンバウアーも、西ドイツ代表監督として臨んだイタリア・ワールドカップ決勝前には、「ピッチに出てサッカーをしよう。そして楽しもう」と言って選手を控室から送り出したという。

 ただ選手を信じることと、試合中は何もしないこととは一緒なわけではない。試合までの準備が大事だからといって、試合が始まってから監督ができることが何にもないわけではない。

 堂安律がプレーするフライブルクはヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメントへのプレーオフでフランスの強豪レンスを下し、ベスト16へと進出した。この試合におけるクリスティアン・シュトライヒ監督の采配は見事だった。

【動画】反応が速すぎる!長谷部の眼前で堂安が右足弾
 3バックで試合に臨んだフライブルクは、守備陣から長めのボールを前線に当てる戦略で挑む。相手の布陣と戦い方を分析した結果、相手選手を自陣におびき寄せてからロビングボールでFWへボールをあてたら、そこで3対3の状況を作ることができるという狙いがあった。

「前半はロングボールからのチャンスの起点は作れていた。前線で数的同数以上の状況になるという狙いがあったし、そうした状況までは持ち込めていた。ただそこから突破までは持ち込めなかった」(シュトライヒ監督)

 悪くはない形をつかむも流れを作り出すことはできないまま時間が過ぎる。堂安も試合後、「ロングボールも多く、自分の得意なゲーム展開ではなかった」と振り返っている。

自分たちのミスもあり、前半に2失点を喫すると、シュトライヒはハーフタイムに動いた。突破力のあるドイツU-21代表MFノア・バイスハウプトを左サイドに、そしてCFにオーストリア代表FWミヒャエル・グレゴリチュを投入。さらに本職はボランチのニコラス・へーフラーを3バックのセンターへと動かした。

「ノアを左サイドへ配置する。そしてチコをCBのセンターに置いた。今まで一度もやったことはなかったが、これまでにずっと頭の中にはあったし、そのことを選手とも話していた。準備はしてあった。ノアとグレゴル(グレゴリチュ)を入れたことで、サイドからの危険なクロスを増やすことができて、うまく機能してくれた。1対1の勝負で何度も勝ち、ドウアンは今日もとても存在感があった。他の選手もそうだが、競り合いに強くプレーできたし、それが試合を自分たちに引き寄せる要因になった」(シュトライヒ監督)

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