森保ジャパンには油断があった。ピッチ内に響き渡った「ボールを見ろ!」の怒号。ベトナム戦の失点はどこか罰を受けたようで...【アジア杯】

2024年01月15日 清水英斗

こんなはずではなかったシーソーゲーム

日本はアジア杯初戦で苦しみながらもベトナムに勝利を収めた。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

[アジアカップ グループステージ第1節]日本 4-2 ベトナム/1月14日/アル・トゥママ・スタジアム
 
 1月14日に行なわれたアジアカップのグループステージ初戦、ベトナム戦を迎えた日本代表は一時、1-2とベトナムにリードを奪われながらも、南野拓実と中村敬斗のゴールで逆転に成功。最終的に4-2で勝利を飾った。
 
 こんなはずではなかった、シーソーゲーム――。

 FIFAランキング17位と94位のチームの試合とは思えない、大苦戦を目の当たりにし、筆者の頭には一昨年のカタールW杯グループステージの初戦、アルゼンチン対サウジアラビアが思い浮かんだ。当時、世界的な強豪を2-1で下す金星を挙げた後、サウジアラビアのエルヴェ・ルナール監督は語っていた。

「ワールドカップにきたら自分を信じなければならない。ベストなモチベーションで戦うのは当たり前。ノーマルだ。ただし、アルゼンチンはロイヤルチーム。ブラジルと対戦するのと全く同じモチベーションでサウジアラビアと戦うわけではない。それもまた、ノーマルだ」
【PHOTO】日本代表のベトナム戦出場16選手&監督の採点・寸評。4発勝利も6人に5点台の厳しい評価。MOMは2G1Aの8番
 だって人間だもの。ベトナムが素晴らしいパフォーマンスを見せたのは間違いないが、日本にも油断はあった。特に序盤、先制した後だ。日本陣内の右サイドでベトナムがスローインを得たとき、日本の切り替えは遅く、「ボールを見ろ!」という怒号がベンチやピッチ内で響き渡った。直後のCKで1-1となる同点ゴールを許したが、その場面も同様に声が飛んでいた。

「ボールを見ろ!」と声が出るのは、ボールを見ていないからだ。集中を促さなければまずいと、日本側が浮き足立つ油断があったのは確かだ。失点はベトナムのサインプレーと、10回やって1度決まるか決まらないかの偶発的精度にも起因するが、どこか日本が罰を受けたようでもある。

 優勝候補と目されてアジア杯に乗り込んだが、日本もまた、ノーマルだった。思い返せば、カタールW杯で優勝したのは初戦で苦しんだアルゼンチンである。今大会の日本も、この大苦戦を良薬に、優勝候補ではなく優勝するチームに変貌したいところだ。
 

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