田中碧、鎌田大地の選外で一気に期待感が高まった佐野海舟。急成長ボランチがアジアカップで求められるもの

2024年01月02日 元川悦子

ゴールに直結する仕事も遂行

タイ戦でも攻守にフル稼働した佐野。アジアカップでの活躍も期待される。(C)SOCCER DIGEST

 史上初の元日での日本代表戦となったタイ戦。直後に控えるアジアカップを視野に入れ、チームの底上げが求められる一戦だった。

 代表経験の浅い選手中心の陣容で、コンディション面のバラツキもあり、前半の日本は思うようにゴールに迫れず苦戦。キャプテンマークを初めて巻いた伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)の圧倒的な個の力ばかりが際立つ印象だった。

 2024年の幕開けの試合で停滞した状況を続けられない。森保一監督は後半のスタートから堂安律(フライブルク)と中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)を投入。堂安が中央のポジションで細谷真大(柏)や伊東と好連係を見せつつ、攻撃をテコ入れし、田中碧(デュッセルドルフ)の先制弾を引き寄せる。

 そして勝負を決定づけたのが、72分の中村のチーム2点目。この場面で光る動きを見せたのが、ボランチで先発した佐野海舟(鹿島)だった。

 中村とパス交換した彼は、機を見てペナルティエリア左奥に侵入。ボールを受けると鋭いマイナスのクロスを送った。これが南野拓実(モナコ)に通り、シュートにつながり、GKが弾いたボールを中村が押し込んだのだ。
【動画】佐野も絡んだ中村のチーム2点目
 このシーンのみならず、佐野の縦への配球、攻撃のお膳立てへの意欲の高さは目を引いた。前半は主に中盤の底に位置してセカンドボールを拾い、組み立てることに比重を置いていたが、後半は前に出ていくシーンも増加。ゴールに直結する仕事もできた。

「バランスを見ることを意識しながら、上がっていける時は上がっていかないといけなかった。ゴールにつながる上がりができたのは良かったです」と本人も安堵感をのぞかせた。

 2023年に町田から鹿島に赴き、岩政大樹前監督に重用された佐野は、これまでボール回収力、対人守備の強さなどディフェンス面が注目されがちだった。しかしながら、11月に日本代表に初招集され、遠藤航(リバプール)や守田英正(スポルティング)ら主力ボランチ陣の攻守両面の強度、鋭さ、的確な判断、発信力を目の当たりにし、「このままじゃいけない」と意識が劇的に変化したという。

 それが今回のタイ戦に表われた。鹿島の先輩・柴崎岳を彷彿させるような攻撃的パフォーマンスを披露し、フル出場で5-0の勝利に貢献。ライバルと目された川村拓夢(広島)、伊藤敦樹(浦和)を抑えて、カタールで開催されるアジアカップのメンバー入りを果たすことに成功したのである。
 

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