大学最後のゴールは、田中克幸が「明治大で学んだことの答え」だった。チームのために全力を尽くす。本当の意味で気づくことができた

2023年12月26日 安藤隆人

将来を見据えて明治大に進学

勝利を決定づけるチーム2点目を挙げた田中(中)。明治大のインカレ制覇に大きく貢献した。写真:安藤隆人

 京都産業大と相まみえたインカレ決勝戦。明治大のMF田中克幸は0-0で迎えた後半のスタートから投入され、流れを明治大に引き寄せると、先制した5分後の53分、得意の左足で試合を決定づける追加点を突き刺した。

 このゴールは実に彼らしいシュートであった。MF中村草太が左サイドをドリブルで突破すると、冷静にゴール前のスペースを探して走り込んだ。

 中村から並行のボールが届くと、足もとでワントラップ。「最初はヒールパスで味方に繋げようと思った」が、自分のマークが緩いと判断すると、ゴールに対して斜め後方に持ち出してから、鋭いターンと共にいつもの脱力した状態でのしなやかな左足スウィングのシュート。完璧にコントロールされたボールはゴール左隅に突き刺さった。

「このゴールは、僕のサッカー人生において重要な1点だと思います」

 試合後、田中は目を真っ赤にしながらこう口にしたが、この言葉の真意は、全国大会の決勝戦でのゴールだから、大学サッカーの最後の試合でのゴールだからというシンプルなものだけではなかった。

「このゴールは、僕が明治大の4年間を通じて学んだことの答えなんです」
 
 田中はこう続けた。彼の言葉を読み解く前に、ここまでの経緯を伝えたい。

 田中は小さい頃から自分の決断で人生を切り開いてきた人間だ。岡山県真庭市で育った彼は、技術を磨くために遠く離れた新潟県の帝京長岡に自らメールをして練習参加を希望し、実際に合格を勝ち取った。

 さらに帝京長岡3年時には、複数のJ2クラブから正式オファーが届いたが、「大学で多くのことを学びたい」と、将来を見据えて明治大に進んだ。明治大でも1年から出番を掴み、今年5月には北海道コンサドーレ札幌内定も手にした。

 一見、順風満帆のサッカー人生に見えるが、そんな田中を持ってしても、大学の4年生になっての1年間は葛藤があった。

 もともと明治大で学ぶことの1つとして、「守備や球際などが苦手」と言っていたように、『球際、切り替え、運動量』の三原則を柱にする明治大で苦手な部分を克服する狙いがあった。だが、その強度は思っていた以上に高かった。

【PHOTO】中村草太&田中克幸の2発で明治大が京産大を撃破、4年ぶり4度目の大学日本一に輝く!

次ページ大切なことに気づいた“つもり”だった

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事