中村俊輔のキャリアで「一番きつかった」2010年W杯。盟友の川口能活がかけた言葉とは?「前向きな気持ちでサッカーに臨んでほしかった」

2023年12月18日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

思い悩みながらもフォア・ザ・チームに徹する

俊輔(左)の引退試合に駆けつけた川口氏(中)。GKながら見事なダイビングヘッドで1得点をマークした。写真:梅月智史(サッカーダイジェスト写真部)

 セレモニーでマイクの前に立った中村俊輔が、言葉を紡ぐ。12月17日、自身の引退試合『SHUNSUKE NAKAMURA FAREWELL MATCH』がニッパツ三ツ沢球技場で開催された。

 花束を両手に抱えながら、稀代のファンタジスタは現役時代やサッカーノートなどについて語るなかで、「一番きつかったのは、2010年のワールドカップですね」と明かす。

 不動の主力として予選を戦ったが、本大会直前で控えに。ピッチ上では力を出し切れぬまま、開催地の南アフリカをあとにした。

 少なからず精神的にも消耗したが、家族の支えが何よりも大きかったという。また大会中に励ましてくれる仲間もいた。その1人が、川口能活氏だ。

 俊輔が「僕の師匠」と慕うほどの男は、どんな言葉をかけてサポートしたのか。レジェンドが集結した『J-DREAMS』の一員として出場した引退試合後に訊くと、かつての名守護神が教えてくれた。
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「とにかく俊輔が前向きにプレーできるようにというか、ポジティブにプレーできるように。負のエネルギーじゃなくて、前向きな気持ちでサッカーに臨んでほしかった。それは、(試合に)出る、出ないは関係なく。それを伝えたかった」

 俊輔は当時、思い悩みながらも大会中はフォア・ザ・チームに徹し、献身的に下支えした。苦しかった経験を原動力に、その後は二度目のJリーグMVPに輝くなど再び、声価を高めた。這い上がってみせた。その逞しい生き様を、川口氏も称える。

「彼には才能があって、しかも努力する。天才が努力すると、こうなるんだなっていう典型的な選手。そして、やっぱり俊輔のプレーには華がありますよね。それを見たくて、魅了される選手も多い。僕もその1人。本当に彼の努力以外、何もない。

 内に秘めたものを持っていて、技術は素晴らしく、テクニックは申し分ない。身体能力は、最初はそれほど高いものではなかったけど、彼の努力ですごく高くなったし、速いキックも蹴れるようになった。悔しさをバネにするメンタルの強さが、中村俊輔を引き上げてきたと思う」

 逆境を力に変える強さこそ、中村俊輔の真骨頂だ。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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