「入っていけるのは良くなった点」2戦連発弾を呼び込んだ堂安律のフリーランは“狙い通り”。若手への振る舞いにも充実ぶりが――【現地発コラム】

2023年12月09日 中野吉之伴

「相手もかなりばててたんで」

オリンピアコス戦でフライブルクの5点目を決めた堂安。(C)Getty Images

 サッカーでは最後まであきらめずに走れとよく言われる。「ひょっとしたら何かが起こるかもしれない」要素がサッカーでは少なくはない。思いもよらぬミスや偶然でボールが転がってきたりする。

 ヨーロッパリーグ(EL)のグループリーグ第5節、ギリシャの名門オリンピアコスにフライブルクがホームで5-0と快勝を飾った試合で、堂安律が見せたプレーから改めてサッカーにおける「無駄走り」の大切さを感じさせられた。

 序盤から攻勢に出たフライブルクは前半だけで4-0と大量リードを奪う。後半に少しゲームが落ち着くのも自然のことだろう。76分、フライブルクの5点目を奪ったのが堂安だった。走り続ける意味を体現した見事なプレーだった。

 左サイドでボールを受けた途中出場ジュニオール・アダムが粘り強く抜けだすと、堂安は躊躇なくハーフェーライン付近から長い距離をダッシュで駆け出した。アダムからのパスはミスとなったが、相手DFにぶつかってこぼれたボールにゴール前まで詰めていた堂安が鋭く反応し、慌てて飛び出してきたGKに動じることなく、左足でふわりとしたシュートを流し込んだ。

【動画】巧みな裏抜けから冷静なフィニッシュ!堂安律のEL初ゴール
 ガクッと膝から崩れ落ちるオリンピアコスの選手たち。チームメイトが駆け寄り喜びの輪ができる中、ベンチ前のクリスティアン・シュトライヒ監督は頭上で手を二度叩き、ゴールを祝福していた。ELでは2試合連続ゴールとなる。

「そうですね。相手もかなりばててたんで、1本転がってくるかなと思ってました。あの時間帯にハーフウェイラインぐらいからスプリントしてあそこに入っていけるのは良くなった点だと思います」

 試合後、堂安はゴールシーンをそう振り返っていたが、この試合で見せていたスペースへの効果的なフリーランはこの時だけではない。ボールが出てくることもあれば、出てこないこともある。それでも足を止めずに走り続ける。自分の動きをおとりに使って、味方選手をフリーにする動きも随所にみられる。

 40分に決まったチーム4点目のシーンがそうだった。FWミヒャエル・グレゴリチュがペナルティエリア付近でボールを持った瞬間、堂安がパスをもらう動きでクィっとスペースへ侵入すると、相手選手が慌てて食いついてきた。その動きを視野に収めた堂安は足元付近に来たパスをスッとスルーし、後ろで完全にフリーになっていたキリアン・シラデッラへボールを流し、それがゴールへとつながった。インテリジェンスの高い動きでゴールを演出したことで、堂安もゴール後にガッツポーズをしていた。

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