キーワードは“見せ球”。ナーゲルスマン率いる新生ドイツのなにがどう変わったのか「どんどん良くなるという手応えがある」【現地発】

2023年11月21日 中野吉之伴

選手が語る“ナーゲルスマン効果”

守備を改善点に挙げるナーゲルスマン監督。(C)Getty Images

 ワールドカップ(W杯)の直近2大会でグループリーグ敗退を喫し、カタールW杯後は6試合でわずか1勝。ドイツ代表のハンジ・フリック前監督は9月のフレンドリーマッチで日本代表に1-4の完敗を喫した直後、その職を追われることになった。

 2024年にドイツで開催されるEURO(欧州選手権)に向け、これ以上の停滞は許されないというプレッシャーの中、新監督に抜擢されたユリアン・ナーゲルスマンはチームからポジティブに受け止められている。指揮官の選手起用に関する方針は次のとおりだ。

「パフォーマンスが全てだ。これは全選手に当てはまることだ。ヨシ(キミッヒ)も例外ではない。彼が他の選手よりよければ、彼がプレーする。もしパスカル(グロス)のほうが良ければ、パスカルがプレーする。対戦相手との相性なども考えたうえで、これがベストと思える選手たちをピッチに送りたい」

 ドルトムントのユリアン・ブラントは"ナーゲルスマン効果"を次のように語る。

「とてもポジティブに感じているし、とても楽観的な気持ちにもなれている。いや、むしろ熱気に満ち溢れていると言ってもいいかもしれないよ。監督はチームにすごくよく合っているし、とてもいいアイデアを(選手に)出してくれていると思う」

 キャプテンのイルカイ・ギュンドアンも続く。

「とても若い監督(36歳)だけど、インテリジェンスがすごくあるし、賢くて、戦術面に明るい監督だ。就任から間もないけど、彼の戦術的な哲学が随所で感じられる」

【動画】スーパーゴール続出!ドイツ対トルコのハイライト
 
 その戦術面を深掘りするなら、フリック時代との大きな違いはビルドアップからのボールの進め方だろう。前線にパスを入れることの大切さは前監督も強調していたが、「どのように?」というところで選手とイメージを共有しきれていなかった。

 結果、散見されたのがCB陣のとんでもないパスミスだ。ボールを持ったアントニオ・リュディガーやニコ・シュロッターベック、ニクラス・ジューレがどこに、どのようにパスを出すべきか見つけれず、それこそ道に迷った人のようになるケースが多かった。

 ナーゲルスマンはボランチへの"見せ球"を有効活用しながら、選手が正しいポジションを取り、ボールを運びやすい構図を作り出している。その見せ球とはCBからボランチへのパスだ。相手選手を食いつかせることが目的で、周囲の選手はボランチから受けやすい位置でパスを受ける準備を整えている。

 そうしたパス交換の連続で相手を誘き出しながら、相手守備ライン間へのパスコースが空いたらすぐに使う。もらった選手は無理して1人で仕掛けようとせずに、サポートに来た選手を使いながら素早く次の局面に進めるのが約束事だ。
 

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