【名古屋】“小倉グランパス”が開幕戦で見せたサッカーとは? 初勝利の裏に隠された指揮官と選手の想い

2016年02月27日 本田健介(サッカーダイジェスト)

注目が集まったJ1初采配は――。

リーグ初陣で勝利を掴み力強くガッツポーズをする小倉監督。前半に奪った1ゴールを最後まで守り切った。写真:滝川敏之 (サッカーダイジェスト写真部)

「名古屋は現実的なサッカーをしていた」
 
 敵将の名波監督の言葉が"小倉グランパス"の初陣のパフォーマンスを端的に物語っていた。

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 名古屋と磐田との開幕戦、注目を浴びたのは他でもないJ1初挑戦となる両監督の采配だった。特に指揮官デビューの小倉監督がどんなサッカーを見せるのか、多くの関心を持たれていたのは間違いない。

 果たして"小倉グランパス"の実態はどうだったのか――。
 
 率直に言えば、開幕戦の戦い方は冒頭の名波監督の言葉通り、理想のサッカーを表現するというより現実を直視したスタイル、つまりありふれたサッカーだったと言わざるを得ない。序盤こそ、最終ラインから丁寧に組み立てる意識が感じられたが、行き詰まると攻撃の多くは長身FWのシモビッチに当てる展開となり、先制点を奪った29分以降は、守備に力を入れ、永井の速さなどを活かしたカウンターへと傾いていった。
 
 自チームの武器を活かすという意味では理に適った戦法ではあったが、期待が膨らんでいた分、なにか肩透かしにあった感も否めなかった。
 
 ただ、「私自身まずはホッとしています。まだまだ足りないところが多いが、今日は勝てたことが非常に大きいです」との小倉監督の言葉を借りれば、監督として初めてのシーズンで、約1か月半でチームを作り、初勝利に導いたという点に関しては素直に評価して良いだろう。
 
 また、パスを足もとでつなぐスタイルを標榜する指揮官はシモビッチの高さを活かした攻撃については明確な指示は出していなかったと話す。
 
「特に僕はシモビッチに当てろとは伝えていませんでした。ただ相手が嫌がっていたのは明らかだったので、選手がそうしたほうが良いと判断したんだと思います」(小倉監督)
 
 この点に関しては今季からキャプテンに就任し、チームの司令塔を担う田口も続ける。
 
「つなぐサッカーは目指していますが、あくまでそれは最初のチョイスであって、押し付けではないです。相手の状況を見ながらつなげられないなら、後ろから蹴るのもありだと思います」
 
 また、シモビッチの決勝弾を正確なクロスでお膳立てした矢野も話す。
 
「今日の試合では監督が目指すサッカーを表現することはできなかった。でも試合のなかで、つなぐことよりも蹴った方が良いと、選手たちで判断して勝利につなげられたのは良かった」
 

次ページ緊急避難策を用意できたのは大きい。

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