“純粋なアンカー”が一人しかいない...マドリーとバルサが抱える共通の課題【現地発】

2023年10月24日 エル・パイス紙

虫眼鏡でプレーを観察されている

マドリーのチュアメニ(左)とバルサのロメウ(右)はチームで唯一の純粋なアンカーだ。(C)Getty Images

 アルキメデスは「支点を与えてくれば、世界を動かしてみせよう」と宣言した。サッカーにその言葉を当てはめれば、中盤、もっと言えばアンカーに相当する。現にバルセロナのセルヒオ・ブスケッツ、レアル・マドリーのカゼミーロ、バイエルンのヨシュア・キミッヒ、マンチェスター・シティのロドリ、チェルシーのジョルジーニョと近年のチャンピオンズリーグを制覇したチームには例外なく、その原理を証明する選手がいた。

 そんな中、今シーズンのラ・リーガにおいて、虫眼鏡でプレーを観察されているのが、マドリーのオーレリアン・チュアメニとバルサのオリオル・ロメウだ。2人は、入団時に寄せられた期待度が大きく異なる一方で、チーム内で課された役割は似ている。

 フィジカルモンスターのチュアメニは、長年アンカーとして君臨したカゼミーロからバトンを受け継ぐという使命を帯びて、昨夏、移籍金8000万ユーロで加入した。その目的があまりにも明確だったため、カゼミーロは約2か月後にマンチェスター・ユナイテッドへ移籍したほどだ。

【動画】「魔法」「驚愕レベル」とスペイン大手紙が絶賛!久保がピンポイントクロスで圧巻のアシスト
 一方、オリオル・ロメウにとってバルサはかつて所属した古巣だ。2011年夏の退団後、チェルシー、バレンシア、シュツットガルト、サウサンプトン、ジローナと5つのクラブを渡り歩いた。ロメウはスタープレーヤーではないし、気取ることもない。資金の不足と、加入当初、ブスケッツの後継者と目されていたフレンキー・デ・ヨングにそのポジションを託すことへの不安が、上層部に32歳のベテランを350万ユーロで呼び戻す決断を取らせた。

 ただチュアメニはポテンシャルを垣間見せてはいるが、レギュラー定着には至っていない。快足で、カゼミーロと同じくらいパワフルで、パンチが利いたミドルシュート、足下の技術、パス&ドリブルセンスを併せ持ち、空中戦に強く、運動量が豊富だ。一見すると、セントラルMFでプレーするために生まれてきたような選手だ。にもかかわらず、殻を破ることができない。せっかく備えている数々の長所を有機的に融合する、戦略的な思考が欠けている。それが現在のチュアメニだ。
 

次ページチュアメニは真の競争相手がいない状況でポジションを奪うことができず

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事