なぜドイツからワールドクラスのSBが消えたのか?育成の観点から根本的な原因を探る【現地発】

2023年10月24日 中野吉之伴

タスクの増加という大きな壁が

10月の米国遠征ではこのターやジューレといったCBが右SBで起用された。(C)Getty Images

 一線級のセンターフォワード(CF)とサイドバック(SB)が不在という問題を抱えるドイツ代表。かつてのミロスラフ・クローゼやフィリップ・ラームのようなワールドクラスは、なぜ出現しなくなったのか。ドイツサッカー連盟公認のA級ライセンスを保持し、現地でユース年代の指導にあたる中野吉之伴氏が、育成の観点からその疑問の答えを探る。第2回はSB編だ。

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 世界のトップに君臨していた時代、ドイツは優秀なSBを擁していた。フィリップ・ラーム、アンディ・ブレーメ、マンフレート・カルツ、パウル・ブライトナー、ベルティ・フォクツ……。だが残念ながら、このポジションのワールドクラスも現代表には見当たらない。

 もっとも、万人が「ワールドクラス」と認めるSBは世界的にも希少だろう。少なくともアタッカーより絶対数は多くないはずだ。実際、2023年のバロンドール候補30人を見渡しても、CB兼任のヨシュコ・グバルディオルを除けば、SBはひとりも見当たらない。

 育成年代の指導者的見地から言えば、ユースとプロではSBに求めるタスクがあまりにも違いすぎる。たとえばユースでは人に強く、上下動を厭わない選手がSBを任されやすい。一方、現代のトッププロはSBの位置からのゲームメークや戦術的に複雑な動きも求められる。

 こうしたタスクの増加に応えるのは簡単ではなく、ユースで名を轟かせたSBが、プロの壁に跳ね返されるケースは決して少なくない。

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 興味深いのはバイエルンのセントラルMFコンラート・ライマーが右SBで起用されて、質の高いプレーを見せていること。ドイツ代表のハンジ・フリック前監督はカタール・ワールドカップ前、本来サイドアタッカーのヨナス・ホフマンを右SBとして試していた。

 つまり前線や中盤で機能するボールテクニック、あるいはボランチとしてもプレーできるインテリジェンスを備えた選手がSBに配される傾向がある。

 育成年代とプロのトップレベルで求められるタスクが同様のものにならないかぎり、ユースからSB一筋で大成する選手が急増することはないだろう。むしろ増えるとすれば、FWやMFを育成年代の段階でSBにコンバートするというケースの方か。

文●中野吉之伴(SVホッホドルフU-19およびU-13監督)

※ワールドサッカーダイジェスト10月19日号より加筆・修正

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