指揮官も「30年で初めて」…窮地の横浜、逆転優勝への唯一の道。キーマンは「下手くそすぎてつらい」とこぼした西村拓真

2023年10月21日 藤井雅彦

プレスに行かなくなったのか、行けなくなったのか

最終盤のキーマンとして期待が懸かる西村。復調なるか。(C)SOCCER DIGEST

 横浜F・マリノスは窮地に立たされている現実から、目を背けずに向き合うことからリスタートする。
 
 先月末、ヴィッセル神戸との首位攻防戦に敗れて勝点差が4に開いた。相手の土俵に引きずり込まれての完敗だった。続く浦和とのルヴァンカップ準決勝では第1戦を1-0で勝利しながらも、第2戦で0-2と敗れて敗退。今季中に獲得できるタイトルはJリーグのみとなった。

 その第2戦で先発出場した上島拓巳が前半途中に、さらに角田涼太朗が試合終了間際に顔面を強打してプレー続行が困難に。前者は経過観察ながら離脱が確定的な状況で、後者は下顎骨骨折で手術を実施。今季2度目の長期離脱を余儀なくされた。

 CBの台所事情は非常に苦しい。8月に畠中槙之輔が右膝の前十字靭帯損傷と半月板損傷で全治8か月見込みの長期離脱となり、エドゥアルドも筋肉系の故障で別メニュー調整となっている。CBを本職とする選手でプレー可能なのは實藤友紀のみである。

 相次ぐ長期離脱者に苦しめられている横浜は、特にCBのポジションで受難が続いている。この状況にケヴィン・マスカット監督が「5人のセンターバックがいて、4人がいない状況。自分は30年間指導者をやっているが、1つのシーズンでこれだけの選手が手術しなければいけない状況になったのは初めて」と頭を抱えるのも無理はない。
 
 代表ウィーク明けの札幌戦ではCBの頭数が足りない危機に瀕している。同じように駒不足だったルヴァンカップ準々決勝・札幌戦の第2戦でボランチの喜田拓也をコンバートした経緯があり、今回も有力な一手となる。

 メンバー選定ではない部分でのスタイルについて言及するならば、ポイントは原点回帰となる。攻守両面において様々な約束事を設けた結果、肝心要のアグレッシブさが薄れてしまった印象は否めない。演者も観戦者も楽しいのが横浜スタイルの真骨頂。ピッチ上でこれといった事象が起きないまま時計の針だけが進んでいったルヴァンカップ準決勝2試合は、誤解を恐れず言えば退屈過ぎた。

 具体的に着手すべきは守備面ではないか。涼しい気候になってきた追い風を味方に、最前線からプレスに走る姿を取り戻したい。折しも水沼宏太が言う。

「守備の躍動感はもしかしたら今までとは違うところかもしれない。相手を見ながら行かなくてもいい時もあるけど、『あるけど……』という部分もある。そこは予測も含めて距離感よくできれば、連動してプレスをかけられる。攻撃も守備も距離感のところは課題がある」

 横浜はプレスに行かなくなったのか、行けなくなったのか。結果としては同じでも過程を大切にするチームだからこそ、意識と共通理解が重要になる。行かなくなったとしたら、行けばいい。行けなくなったとしたら、行けるようにすればいい。

浦和に逆転負けでルヴァン敗退、CBに怪我人も...リーグ戦やACLに向け、問われる横浜指揮官のマネジメント力

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