進化を続ける川崎の橘田健人。2戦連続ミドル弾の輝きと垣間見えたキャプテンの顔【天皇杯】

2023年10月09日 本田健介(サッカーダイジェスト)

練習の成果が表われるゴールに

ゴールをチームメイトの瀬川らと喜ぶ橘田。チームを決勝へ導いた。(C)SOCCER DIGEST

[天皇杯・準決勝]川崎4-2福岡/10月8日/等々力陸上競技場

 苦しい状況からチームを救う。しかも2試合連続でだ。

 川崎のキャプテン、橘田健人がクラブの天皇杯決勝進出を力強く後押しした。

 等々力で行なわれた福岡との天皇杯・準決勝。川崎は開始5分に脇坂泰斗の左CKを山村和也がニアで頭で合わせて先制点を奪う幸先の良いスタートを見せたが、徐々に福岡の反撃に遭う。

 42分には左サイドから突破され、金森健志に同点弾を許し、嫌な空気が流れながらハーフタイムを迎えた。後半も一進一退の攻防が続く状況。そこで輝いたのが橘田だった。

 70分、相手GKが弾いたクリアボールが目の前に飛んでくる。浮いたボールを左足のダイレクトで力強く合わせると、DFのブロックにあいながら、ネットを揺らしてみせたのである。

 5日前のACL・蔚山戦では試合終了間際に右足で劇的な決勝弾をあげたばかりであった。2試合続けて、しかも両足での見事なミドル弾である。

 蔚山戦の後には鬼木達監督が「普段練習している成果が蹴り方は少し違いましたが出たと思います」と語っていたが、まさにトレーニングを積み重ねてきたからこその結果なのだろう。

 本人は「ほどほどにやってきました」と謙遜するが、本数を意識し、何度も何度も蹴り込んできたという。目には見えない努力が表われた見事なゴールだったと言えるだろう。

【厳選ショット】山村、橘田、マルシーニョ、L・ダミアン!怒涛のゴールラッシュで決勝進出を決める|天皇杯準決勝 川崎4-2福岡
 大卒3年目の今季は、驚きの主将就任で、調子を崩す期間もあった。それでも研鑽を続けた男は、自慢の守備力とともに、攻撃面も磨き力強く進化して戻ってきた印象だ。

 福岡戦ではベンチが交代カードなどで動くたびにその意図を確認して周囲に伝達し、途中出場した後輩の高井幸大らに声をかけ、微妙なジャッジがあればレフェリーに意見を伝えにいく。その姿はまさにキャプテンと呼べるに相応しいものであった。

 本人にその想いを伝えると、「自分では分からない部分もありますが、多少は前よりは周りを見てやれているのかな」と彼らしい笑顔を浮かべる。

 決勝戦で柏を下せば、キャプテンとして天皇杯のカップを掲げることになる。

 黒子役を好み、「(チームを代表して掲げるのは)ちょっと嫌なんですが」とおどけるが、「優勝したいです。その練習もしておきます」となんとも彼らしい言葉も残す。

 満面の笑みで表彰台に上っている姿をぜひとも見たい。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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