【セリエA現地コラム】あの輝きを再び――。エル・シャーラウィが新天地で復活の兆し

2016年02月11日 片野道郎

「今後10年を担うスーパータレント」と称賛されたが…。

デビューとなったフロジノーネ戦でいきなり決勝点を挙げたエル・シャーラウィ。ミラン時代にイブラヒモビッチから学んだというヒールキックだった。(C)Alberto LINGRIA

 冬のメルカートでモナコからローマに移籍したステファン・エル・シャーラウィが、新天地で水を得た魚のような活躍を見せている。
 
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 移籍してからの1週間で3試合に出場して2得点・1アシスト。大きな武器であるスピードとタイミングの感覚を生かしてペナルティーエリアに入り込み、左サイドからのクロスをヒールボレーで決めたフロジノーネ戦(セリエA22節)のゴールはとりわけ美しかった。
 
 オープンスペースを攻め上がる高速ドリブルや思い切りの良いミドルシュートといった以前からの長所ももちろん健在だ。左サイドを起点として積極的にフィニッシュに絡みながら、守備でも骨惜しみせずに長い距離を戻る献身的かつキレのあるプレーぶりは、ミランでもっとも輝いていた時代のパフォーマンスを彷彿させる。
 
 そう、ミラン。育ったジェノアからセリエBのパドバでの「武者修行」を経て18歳で引き抜かれ、2年目の2012-13シーズンにはマッシミリアーノ・アッレグリ監督(現ユベントス)の下でレギュラーに定着。開幕からクリスマスまでの17試合で14ゴールを挙げ、「今後10年ロッソネーロ(ミランの愛称)の攻撃を担うスーパータレント」と、もてはやされたものだった。
 
 しかし年が明けた13年1月、マンチェスター・シティからマリオ・バロテッリが移籍してきたのと機を同じくして深刻な不振に陥り、その後の21試合でわずか2得点。続く13-14シーズンは、開幕直後の9月に中足骨を骨折、その後も足首に故障を抱えてほぼ1シーズンを棒に振った。
 
 昨シーズンも、フィリッポ・インザーギ監督の下で前半戦は左ウイングのレギュラーを務めたもののパフォーマンスは低調、そして1月にはまたも中足骨骨折を繰り返して、復帰したのは5月になってからだった。
 
 12-13シーズンの前半戦にあれほどまばゆい輝きを見せたにもかかわらず、その後の2年半はその灯が消えたまま。そして昨夏、シニシャ・ミハイロビッチ新監督の構想から外れる形で、フランスのモナコに買い取りオプション付きでレンタル移籍することになった。
 
 そのモナコでは4-2-3-1の左ウイング、時には1トップとしてコンスタントに出場し、公式戦24試合で3ゴール・1アシストというまずまずの成績を残した。
 
 しかしモナコは、レンタル契約上25試合に出場すると発生する1300万ユーロ(約18億2000万円)での買い取り義務を避けるために、24試合で起用をストップ。ウインターブレイクに入ると、買い取るつもりがない旨をミランに伝えたのだ。

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