【FC東京】“リオ五輪出場の立役者”SBの室屋は即レギュラーになれるのか

2016年02月09日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

このタイミングでプロ入りを決断した理由は?

2月8日、明治大・駿河台キャンパスの紫紺館で記者会見を行なった室屋。FC東京でルーキーイヤーから目指すはレギュラーだ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 2月8日、現役大学生として唯一リオ五輪アジア最終予選を戦った室屋成が、明治大・駿河台キャンパスの紫紺館で記者会見を行なった。大学3年生ながらも、FC東京とプロ契約。長友佑都(明治大→FC東京)や武藤嘉紀(慶応大→FC東京)と同じように、卒業を待たずにFC東京へのプロ入りを決意した彼は、これからの目標を問われると次のように答えた。

「FC東京に入って、まずは試合に出ること、そしてレギュラーになることが目標。(8月には)リオ・オリンピックがあるので、主力として活躍すること。その先にA代表での活躍があると考えています」

 このタイミングでプロ入りしたのは、「リオ五輪アジア最終予選での試合を経て、もっと上のレベルで戦いたい、そういう気持ちが強くなった」からでもある。あのしびれるような舞台を経験し、波のように押し寄せてきたプレッシャーと戦った末に優勝というこの上ない喜びを味わったのだから、"上"を目指すのは当然だろう。

 しかし、そんな室屋がFC東京で即レギュラーになれるかと言われれば疑問符が付く。実際、FC東京に特別指定選手として参加した昨季はベンチ入りさえしていない。「(特別指定でチームに合流した当初は)最初、ベンチ入りぐらいはできるかなという甘い気持ちがありました。でも、なかなかベンチにも入れずに悔しい想いをしました」。

 当時のFC東京には、右に徳永悠平、左に太田宏介(現フィテッセ)と不動のSBがいた。前者は06年から大きな怪我もなく、ここまで年間30試合以上をこなしている鉄人、後者は16シーズンのアシストランクでトップを走るチーム随一のチャンスメーカー。このふたりを押しのけてレギュラーの座を奪うのは至難の業だった。

 SBの有望株として14年にFC東京入りした松田陸も、左右に対応可能なユーティリティ性がありながらも徳永と太田の壁に苦しんだ。J1での実績は、14、15シーズン合わせて16試合・1得点。そのほとんどが途中出場だった。そしてこのオフ、松田はC大阪への完全移籍を決断した。

 松田のような例もあるだけに、室屋に対しても過剰な期待は禁物だ。FC東京入りを決断したものの、結局はベンチに入れず、クラブで試合に出てないからという理由でリオ五輪の本大会に出場できない。そんな最悪のシナリオさえ考えられる。

 太田はオランダのフィテッセに移籍したではないかとの意見もあるだろうが、後釜候補の筆頭は百戦錬磨のベテラン・駒野(今オフに磐田から加入)だ。ワールドカップ本大会を二度も戦った経験は伊達ではなく、プレースキックの精度も今なお一級品。室屋にとっては、なかなか高い壁である。
 

次ページ“J3”でなら、室屋は間違いなく即戦力だ。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事