この選手は普通に話すよりも、ボールで会話をしていたいのかもしれない。私が編集長時代、サッカーダイジェスト「天才を究める」という特集の中で、中村憲剛さんと対談してくれた小野伸二選手のコメントを聞いて、そう思った。

「時間を忘れて楽しく話しちゃったね。でも、やっぱり憲剛と一緒にボールを蹴りたいよ」（小野）

【動画】小野伸二伝説

　根っからのサッカー小僧なのだろう。小野選手の根底にはあるのは、徹底的に楽しむこと。実際、サッカーダイジェスト「Jリーグ厳選20クラブの平成30年史」号の巻頭インタビューで、「僕は高校の時から、見に来てくれた人たちを楽しませたいと思ってプレーしていました」と話している。

　そんな小野選手のプレーに、数多くのサッカーファンが魅了された。シルクのようなボールタッチ、吸盤のように吸い付く胸トラップ、鮮やかなフェイントなど、ピッチで繰り出される美技に酔いしれた。プロでも異質。だから、彼らはこの男のことを「天才」と呼ぶのだ。
 

　かつて「小野伝説」という動画撮影で、同じ黄金世代の播戸竜二さんが話してくれたエピソードが忘れられない。

「（小野の）リフティングを初めて見た時、ボールが小野伸二に触られて喜んでいる」

　日本サッカー界屈指のエンターテイナーのプレーを、今季限りで見ることができなくなってしまうとは…。正直、寂しい。ただ、今季限りでの現役引退を発表しただけで、ピッチでその華麗なボール捌きを目にできるチャンスはある。是非、小野選手のラストダンスに期待したい。

文●白鳥和洋（サッカーダイジェストTV編集長）

「正直めちゃくちゃ寂しくて、悲しい」44歳の小野伸二、現役引退発表に感謝・労い・悲嘆の声続々！「まだ辞めないで～」「素晴らしい魔法をありがとう」

「凄いとしか言いようがない」名手・小野伸二が絶賛した日本代表戦士は？「あっと驚くようなプレーをする」

【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「 J歴代ベスト11」を一挙公開！