【マドリー番記者の視点】冬の移籍市場はやはり静観。勝負の今夏はデ・ヘア、アザール、そしてネイマール獲りに本腰か

2016年02月05日 パブロ・ポロ

失態つづきのペレスは夏に大規模な補強に打って出る。

ジダンの監督就任を機にマドリーの雰囲気は劇的に改善された。これを追い風に、ペレス会長は夏の市場でビッグサプライズを起こし、サポーターの信頼を取り戻す腹積もりだ。(C)Getty Images

 レアル・マドリーは予想通りの形で今冬の移籍市場を終えた。クラブは当初から「冬は誰も獲得しない」と表明し、実際に静観を決め込んだのである。

 ただ実際には、あるポジションの補強は検討していた。左SBである。

 現チームにおいて、マルセロのバックアッパーがいないこのポジションは、唯一手薄な箇所である。しかし獲得に動くとなると、問題も出てくる。昨夏にフロレンティーノ・ペレス会長の肝煎りで3100万ユーロ(約43億円)を投じて獲得した右SB、ダニーロの存在だ。

 ジネディーヌ・ジダン監督はダニエル・カルバハルを高く評価し、右SBにこのスペイン代表を重用している。その控えに甘んじるダニーロは左もこなすが、左に新たに選手を獲得すれば、出場機会はさらに減ってしまう。そうなれば彼自身のモチベーションに響くはずだし、何よりペレスが主導した補強自体が失策と受け取られかねない。左SBの補強を見送った理由のひとつである。

 選手獲得に動かなかったのは、FIFAから下された制裁にうまく対応するためでもある(18歳未満の選手獲得に際する規約に違反したとして、マドリーには16年夏と17年冬の補強禁止処分が言い渡された)。

 マドリーは今回の決定を不服として、FIFAの上訴委員会に異議を申し立てた。これにより処分は保留に。かつてのバルセロナと同じ作戦、つまり時間稼ぎに打って出たのである。処分保留中は選手の獲得が認められる。そのため、補強禁止は17年冬からにずれこむ可能性が高いと見られている。

 今回の嫌疑に対して、マドリーは無実だと主張しつづけている。そのため仮に1月に選手獲得に動いていれば、過ちを認め、制裁を見据えて補強に出たという印象を周囲に与え、法廷で争う際にいま以上に主張が通りにくい状況を作り出してしまう恐れもあった。

 実際、マドリーはボカのMFロドリゴ・ベンタクールの獲得を決めていたが、最終的にペレスの判断で話を白紙に戻している。同じくシャルケのレロイ・ザネの獲得話も、夏に見送った。

 クラブ関係者や代理人の話を総合すると、この夏、ペレスは大規模な補強に打って出る見込みだ。彼はいま、サポーターの信頼を失いつつある。昨夏のダビド・デ・ヘアの獲得失敗、今回のFIFAの制裁、コパ・デル・レイの敗退(出場停止処分中のデニス・チェリシェフを起用し失格に)、独断で招聘した指揮官ラファエル・ベニテスの失態、さらにはクラシコでの0-4の惨敗……。この半年間、マドリーの周辺はネガティブな話題に溢れていた。

 幸いにも、ジダンの監督就任を機にチームの雰囲気は明るくなった。この流れに乗じて豪華な補強を実現し、印象をさらに良くする。それが、ペレスが思い描くプランだ。

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