【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』其の五十六「欧州のビッグクラブ、そして日本のU-23代表も利用。“2トップのアドバンテージ”をJクラブも再考すべきだ」

2016年02月04日 小宮良之

2トップの連携は単純だが相手ディフェンスの大きな脅威になる。

今シーズンのユベントスはディバラ(左)とマンジュキッチ(右)の新戦力2トップが機能性を上げるともに、チーム状態が上向く。2月3日のジェノア戦ではクラブレコードのセリエA13連勝を飾った。(C)Getty Images

 かつてサッカー界には、2トップがスタンダードだった時代がある。ところが1990年代後半から、ストライカーたちは次第に肩身の狭い思いをすることになっていった。
 
 指導者たちによる"戦術"の研究が進む中、「いかに負けないか」が突き詰められ、その結果として2トップは解体された。具体的には、ゾーンディフェンスとプレッシングが重要視されたことによって、FWも守備の負担を強いられることになる。結果、ストライカーを1人減らした4-2-3-1などのフォーメーションが全盛を迎えたのである。
 
 3トップという形も出てきたが、実質的なFWは中央の一人だけ。つまり、2トップは過去の遺物となった。ストライカー受難の時代である。
 
 しかし、ここ1~2年のヨーロッパでは、2トップが見直され始めている。ジョゼップ・グアルディオラ(バイエルン監督)、カルロ・アンチェロッティ(元レアル・マドリー監督)、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー監督)、マヌエル・ペレグリーニ(マンチェスター・シティ監督)、ロラン・ブラン(パリ・サンジェルマン監督)など欧州のビッグクラブを率いる名将たちは、2トップを有力なオプションとして確立。マッシミリアーノ・アッレグリが率いるイタリアの名門ユベントスに至っては、2トップを主要システムに用いた昨シーズンに、チャンピオンズ・リーグ準優勝、セリエAとコッパ・イタリアの2冠という成果を得ている。
 
 そして今シーズンは、プレミアリーグで台風の目になっているレスターが、ジェイミー・ヴァーディーと岡崎慎司の2トップを軸に破竹の勢いを見せる。リーガ・エスパニョーラではビジャレアルやエイバルなどが2トップを採用して好調を維持する。
 
 強力でコンビネーションの良い2トップは、敵の最終ラインに入り込み、相手DFに大きな脅威を与える。1人がオフサイドラインのギリギリで駆け引きしながら、もう1人がDFに対して身体を張る。それだけで、敵の最終ラインは一歩退かざるをえないわけで、2トップの連動は大変なストレスを相手に与える。
 
 また、2トップが敵の両CBとぶつかり合うことにより、相手がラインを押し下げたスペースに中盤の選手が押し入ることもできる。
 
 攻撃が守備になるのだ。
 
 守備に重点を置いた戦術ではなく、攻撃を重視して置いた場合、2トップが有用なシステムとなり得ることが改めて実証されている。4-4-2に近い布陣で、ワイドに優れたクロッサーがいれば、それだけで好機を作れる。2トップのどちらかが空中戦で競り勝ち、もう1人が裏に走り込む、という連携で相手を混乱に陥れることもできるだろう。単純だが、効果的な攻撃と言える。

次ページ日本は「ストライカー不在」以上に「ストライカー不遇」なのではないか。

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