【リオ五輪予選】恩師が語る鈴木の成長。「“あれ”は武蔵らしくない」。ただ、ひとつの懸念も…

2016年01月27日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

強烈に映った「らしくない」チャンスメイク

「らしくない」チャンスメイクから先制弾を演出。鈴木はイラク戦で成長した姿を見せた。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

「足もとにボールが収まらない時が多いですよね」

 イラク戦が始まる数時間前、記者が鈴木武蔵の恩師にそう訊くと、意外な答が返ってきた。

「まあ、そう言わないでくださいよ。あれでも上手くなったんだから(笑)。プロに入ってからも間違いなく成長していますよ」

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 群馬の桐生一高で監督として冬の選手権に出場した実績もある田野豪一氏と、そんなやりとりをしていたから、"あのプレー"は強烈に映った。あのプレーとはもちろん、イラクとの準決勝で久保裕也の先制点を呼び込んだチャンスメイクのことである。

 前半の26分、左サイドでひとりスルーパスから抜け出した鈴木が自慢の快足を活かして敵陣深くまで切り込むと、ゴール前に走り込んだ久保に絶妙なラストパス。記者が懸念していた"足技"であんな美しいアシストを決めるとは……。ただただ驚きだった。

 かつての教え子である鈴木が久保のゴールをお膳立てした直後、その試合をテレビで観ていた田野監督も一気にテンションが上がったという。

「相当嬉しかったよね(笑)。来たよ!って。敵の裏にボールを出して、追いつくところまでは武蔵らしい。ただ、あの後のセンタリングは武蔵らしくない(笑)。予想できないプレー。あんなアシストができるようになるなんて、素晴らしいと思いました」

 予想できなかった──。ボールに追いつくところまでは「武蔵らしい」が、そこからボールを運んで丁寧にアシストするところまで馬力がついたところが、田野監督に言わせれば「成長」だった。

「繰り返しますが、あのセンタリングは素晴らしかった。プロに行ってから特にテクニックの部分が伸びていますよ。いまだに(足もとでボールが)多少弾む時があって、メディアの皆さんに(鈴木のポストワークなど)はあまり上手いように見えないかもしれませんが、プレーの意図はしっかりと伝わってくる。失敗しても、『こっちの方向にパスを出したいんだろうなあ』というのが分かります。

 正直、高校時代は(鈴木)武蔵のプレーからそういう意図が感じ取れませんでした。プロに入った直後も"予想通り"失敗していた。それが新潟で一時期レギュラーになった頃から、変わってきましたね。失敗しなくなってきた。身体の向きとかで、やりたいことが分かるようになった。イラク戦のあの場面もそうですよね。抜け出した後、ボールを運んでからのプレーはイメージできていた。高校時代から見ていた私にすれば、『成長したなあ』となるわけです」
 

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