「W杯後の未来に期待していたから、しんどさはあった」権田修一の最大の挫折とは?

2023年09月04日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「嫌なことなんて山ほどある」

W杯後に海外移籍を実現できなかった権田だが、心機一転、今季は清水で勝利に貢献している。写真:サッカーダイジェスト

 フットボーラー=仕事という観点から、選手の本音を聞き出す企画だ。子どもたちの憧れであるプロフットボーラーは、実は不安定で過酷な職業でもあり、そうした側面から見えてくる現実も伝えたい。今回は【職業:プロフットボーラー】権田修一編のパート4だ(パート5まで続く)。

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 ショックをきっと引きずらないスタンスの権田選手に、あえて訊いてみる。

「最大の挫折は?」

 権田選手は少し笑みを浮かべて答える。

「なんですかね、挫折って悪いことではないんですよね」

 そういう捉え方はある。

「キーパーをやっていて嫌なことなんて山ほどあるじゃないですか。たったひとつのミスで失点したら、それも挫折ですし。ただ、挫折ってそもそもなんですかね」

 そう言いながらも、思い当たる節があるようだ。

「カタール・ワールドカップが終わって、もっと上のステージでサッカーをしたい願望が膨らんだんですよ。あの大会で世界を、真剣勝負を知ったので。でも、そういう場(欧州の主要リーグ)に行けなかったのが正直、きつかった。ワールドカップ後の未来に期待したところがあって、結果として(海外移籍が)ダメだった部分でのしんどさは結構ありましたね」
 
 しんどいと言えば、思い出される出来事がある。2015年に患ったオーバートレーニング症候群だ。7月29日に味の素スタジアムで開催されたFC東京対仙台戦後、権田選手はミックスゾーンに姿を現さなかった。確か翌日から日本代表合宿が始まるのに、出てこない。これは只事ではないなと、そう思ったのを今でも鮮明に覚えている。

 後日、クラブリリースで「オーバートレーニング症候群」と発表されると、復帰まで相応の時間を費やす。その空白の時間こそ権田選手にとって最大の挫折だったのではないかと、個人的にそう考えていたが、当人には「挫折ではないです」と断言された。

「あれが本当に挫折だとしたら、たぶん、もうやってないので」  

 確かに。ズシンと、その言葉が心に響く。いわゆる心の病を克服するのは決して簡単なことではない。

「いろんな人に助けてもらいながら、なんとか(心を)折らずに、ギリギリ立たせてもらっていた感覚があります」

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