エスパ復帰の原輝綺と鈴木唯人。市船の先輩後輩コンビの現状と期待すること「戦術の幅が大いに広がる」「もっと違いを見せてほしい」

2023年07月30日 元川悦子

指揮官は高校の大先輩

今夏に清水に復帰した鈴木(左)と原(右)。J1昇格を目ざすチームで力になれるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)、J LEAGUE

 昨季のJ1で17位に沈み、クラブ創設以来、2度目のJ2降格を強いられた清水エスパルス。オリジナル10の意地と誇りに賭けても、Jリーグ発足30周年の今季は1年でのJ1復帰を目ざしている。

 しかしながら、シーズンが開幕すると序盤7戦未勝利というまさかの苦境に直面。昨季途中から指揮を執っていたゼ・リカルド監督が4月頭に解任されるというショッキングな出来事も起きた。

 直後に秋葉忠宏コーチが監督に昇格。4月8日の東京ヴェルディ戦で初勝利を挙げると、そこから8戦無敗の快進撃を披露。立て直しの布石を打った。

 5~6月にかけては一時停滞した時期もあったが、7月に入ってからは5戦無敗と復調。27節終了時点でJ1昇格プレーオフ圏内の6位に浮上し、29日のホーム・ファジアーノ岡山戦を迎えることになった。

 前節・栃木SC戦で攻撃の絶対的キーマン・乾貴士が負傷し、欠場を余儀なくされるなか、秋葉監督は白崎凌兵をトップ下に抜擢。通常通りの4-2-3-1でスタートし、良いリズムで試合を運んだ。

「他のところが上手くいっていたので、チームを大きく変える必要はなかった。点こそ入らなかったが、凌兵は面白い形で動いていた」と指揮官は背番号14を評価したが、押し込みながら決めきれなかったのも確かだ。

 そこで、後半から3-4-2-1に布陣変更し、11分にはストラスブールへのレンタル移籍から復帰した鈴木唯人を投入。3分後に彼とのワンツーから中央を切れ込んだカルリーニョス・ジュニオが先制弾を奪うことに成功する。

 この虎の子の1点を最後まで守り切った清水が首尾よく勝点3をゲット。暫定4位まで順位を上げ、自動昇格圏の2位・ジュビロ磐田に5ポイント差まで迫ってきた。
 
 乾の不在は少なくとも8月半ばまでは続く見通しで、それはチームにとって大きな懸念材料と言える。そんな時期だからこそ、鈴木とグラスホッパーへレンタル移籍していた原輝綺の"ダブル復帰"は非常に大きい。

 前述の通り、鈴木は後半の約35分間のプレーだったが、決勝点をアシストし、64分には芸術的な右足ループシュートをお見舞いした。これはクロスバーを直撃し、得点には至らなかったものの、高度な技術と創造性溢れる彼らしいプレーだった。

 一方の原も、古巣復帰2戦目ながら先発フル出場し、前半は右SB、後半は3バックの右に入ってプレー。タッチライン際の攻撃参加やクロスに加え、後半はボランチの位置まで上がってボールをさばくシーンも随所に見せていた。

 秋葉監督は、市立船橋高の後輩にあたる2人の現状を次のように説明する。

「唯人はもっともっとやれる選手。彼の良さはゴールに直結したプレー、ゴールに絡むプレー。今日はワンツーの壁になりましたけど、彼自身にはもっと違いを見せてほしいので、コンディションを整え、チームにフィットして、持っている能力を100パーセント、120パーセント出せるようにやっていきたいです。

 輝綺に関しては、90分間、しっかりコンディションを整えながら、かなり違いを見せてくれたと思っています。彼が1人いるだけで戦術の幅が大いに広がるので、『戦術・原輝綺』も十分にある(笑)。あれだけ地上戦も空中戦も強さを見せてくれると、我々としても非常に頼もしいと感じます」

【PHOTO】炎天下の中、笑顔でトレーニングに励む清水エスパルスを特集!

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