スイスで研鑽を積む瀬古歩夢、澄んだまなざしで「シティが好き」。市場価値は所属クラブでトップに【現地発】

2023年06月19日 中野吉之伴

「半年間は試合に出られないと思ってきていた」

ファンだけでなく、選手、監督からも信頼を得る瀬古。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 スイスリーグ1部グラスホッパー・チューリッヒのホームスタジアム、レッツィグルンドのコンコースで売店の様子を見ていたら、ファンの話し声が聞こえてきた。この日は、ホームに9位のシオンを迎えての一戦だ。

「今日、セコが出場停止で出られないんだよな。うーん、厳しい試合になりそうだ」「ここ最近、チームの好調はセコのプレーによるところも大きいからなぁ」

 日本代表DF瀬古歩夢はクラブにおいて完全な中心選手の一人として、ファンから評価されていることがうかがえる。ファンからだけではない。チームメイト、監督からも信頼されている。試合取材に足を運ぶと、ピッチ上で何度もコミュニケーションを取る姿が目に飛び込んでくる。

 監督が呼ぶとすぐに耳を傾け、ジェスチャーを交えながら内容を整理する。不明瞭なことがあったら、もう一度確認する。チームメイトとこまめに話をして状況に上手く対応していく。

 瀬古がグラスホッパーへ移籍して1年以上が経った。2022年1月に加入してから7試合目のセルベットFC戦で初めてスタメン起用されると、そこから最終節まで12試合連続フル出場。しかし、本人的にはもっと試合に出られない時期がある覚悟をしていたと話してくれたことがある。

「この半年間は試合に出られないと思ってきていた。試合に出て、慣れることができたのは大きい。プレー強度や質をここで示していかないといけない」

 36節・バーゼル戦後に瀬古はそう明かしていた。
 
 スイスリーグのヤングボーイズベルンやバーゼルは、ヨーロッパリーグ(EL)やヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)でグループステージを勝ち上がるほどの実力を持ったクラブだ。バーゼルは、ECLで今季は準決勝まで進出しているし、かつてはチャンピオンズリーグ(CL)で、マンチェスター・ユナイテッドを撃破したこともある。

 スイスはヨーロッパのリーグの中では特殊で、1部リーグが10チーム構成。それぞれ4試合ずつの計36試合で順位を競う。リーグのレベルは拮抗しているし、シーズンを通してヤングボーイズやバーゼルとそれぞれ4回ずつ対戦できるのは、ステップアップを狙う選手にとっては格好の経験場となる。

 昨季34節のバーゼル戦後に瀬古は、次のように自分の取り組みについて説明してくれた。

「今のサッカーはフィジカル、スピードが主流になってきている。日本とまた違ったサッカーを自分の頭と身体に入れ込めば、これから先、何があっても対応できるようになると思う。そういったフィジカル部分だけではなく、そのなかでの駆け引きの部分、特にバイタルエリアの中での駆け引きは、バーゼルの選手はやっぱり上手かった」

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