大きなポテンシャルを秘めた関西学院大のFW渡邉颯太。“自分らしさとは何か”の壁にぶち当たった昨年、その先に見えてきたのは…

2023年05月29日 安藤隆人

2トップの先輩コンビを前に焦燥感と不安が入り混じる

関西学院大のストライカー渡邉。180センチのサイズと天性のバネ、スピードを併せ持つ。写真:安藤隆人

 関西学生サッカーリーグ1部・第7節の関西学院大対京都産業大の一戦。炎天下のなかで行なわれたこの試合、3-1で勝利を収めて首位をガッチリとキープした関西学院大のストライカーである渡邉颯太(4年)は、まだ未完成ではあるが、相当なポテンシャルを秘めた選手だ。

 180センチのサイズと天性のバネ、そしてスピードを併せ持つFWは、ポストプレーと前線からのハイプレス、そしてゴール前での勝負強さを持っている。

 草津東高では1年生の頃からチームのエースストライカーとして君臨し、3年連続で選手権出場を果たし、前線でハードワークをしながら決定的な仕事をするストライカーとして注目を集めた。

 高校3年生の時に湘南の練習に参加するが、オファーはもらえず。関西屈指の強豪である関西学院大に進学し、徐々に頭角を現すが、目標である大卒プロ入りのために重要視していた昨年1年間は最も苦しいシーズンとなってしまった。

 春先は屈強なストライカーの木村勇大(現・京都)とともに『ダブルエース』として期待されて出番を掴んだが、途中で負傷して離脱すると、離脱中に1学年上のFW山田剛綺(現・東京V)が急成長を遂げたことで、復帰しても渡邉の出番は激減した。
 
 関西ナンバーワンの2トップへと成長していった先輩コンビの後塵を拝す形になってしまった渡邉は、「どうあの2人に割って入るのかを考えれば考えるほど、じゃあ自分の何が武器なのか、どこで勝負をしていくべきかを迷うようになりました。課題ばかりに目がいくようになり、それに取り組むと自分の本来の姿を見失ってしまうような……。本当に悪循環に陥ってしまいました」と、焦燥感と不安が入り混じり『自分らしさとは何か』という壁にぶち当たった。

 それでも練習試合や関西トーナメント戦では実力を発揮した。ポテンシャルを買われて、昨年はJ2クラブの練習にも参加した。だが、リーグ戦ではわずかながらチャンスを与えられても結果を出せず、ベスト4に終わったインカレも、準々決勝の常葉大戦に残り10分で出場したのみで終わった。

 だが、渡邉はこの1年間、ただ低迷をしていたわけではなかった。毎回、自身のプレー映像を見返しては、自分の課題ややるべきことをノートに記した。時には客観的に見ている人間からアドバイスをもらいながら、自分はどんな癖を持っているのか、あの2人にあって、自分にないものは何かを徹底してあぶり出し、それに対して1つずつ自分なりの改善策を練っては、それを練習のなかで意識的にトライしていた。

 正直、上手くいくことよりも、上手くいかないことのほうが多かったが、それで諦めたり、自分に絶望したりせず、ただひたすら前に進むのをやめなかった。

「勝負の年だったのに、不甲斐ないままで終わってしまった。もう泣いても笑っても最後の1年なので、冷静に自分を客観視しながらも、本能でいくべきところはいって、より怖いストライカーになりたい」
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