選手生命を脅かす大怪我から復帰。不屈の兄を尊敬し、奮い立つ法政大2年生FW相澤デイビッドが示した覚悟「一生懸命やらないといけない」

2023年05月16日 安藤隆人

水面下では強豪大学同士が激しい争奪戦

195センチの高さとフィジカルが魅力の相澤。ラインブレイクからのフィニッシュも持ち味で、力強さとしなやかさを兼備するストライカーだ。写真:安藤隆人

 関東大学サッカーリーグ第5節・法政大対筑波大の一戦。法政大は1-5の完敗を喫してしまったが、途中出場の2年生ストライカー・相澤デイビッドのプレーに目を奪われた。

 相澤が投入されたのは、0-3で迎えた77分のこと。点を取るためにMF髙橋馨希に代わってピッチに入った相澤は、195センチの規格外の高さとフィジカルを武器に、最前線で空中戦の強さとポストプレーを披露した。

 日本文理高時代から、すらっとした足と、高さに加え、下半身も上半身もバランス良く鍛え上げられていて、力強さとしなやかさを兼ね揃えたストライカーとして、試合を見るたびに驚きを与えてくれる選手だった。

 ライナーの高いボールに対し、驚異的なジャンプを見せると、そのまま胸で収めてターンしたり、鋭い動き出しでディフェンスラインをブレイクして、長いストライドで相手を置き去りにしたりと、前線でのパワーとスピードは目を見張るものがあった。

 だが、彼が高校3年生の時の日本文理は新潟県リーグ1部に所属しており、かつ3年間で一度も全国大会に出場できなかったこともあり、凄まじい素材を持ちながらも全国区にはならなかった。
 
 それでも、関東大学サッカーの強豪大学が相澤の才能を見逃さなかった。目立たなかったが、水面下では強豪大学同士の激しい争奪戦が繰り広げられた結果、進路は法政大に決まった。

「県リーグでプレーしていて、全国区ではなかった僕を欲しいと言ってくれたことが嬉しかった」と、相澤は感謝しながらも、「ほとんどの人が僕を知らないと思うし、実際に新潟県のレベルから大学に行けば、いきなり全国トップレベルの戦いになる。通用するのかは不安がある」と正直な気持ちを口にしていた。

 だが、臆することなく法政大に進み、2年生ながら出番を得ている。確実な成長の跡を見せながら。

「最初はレベルの差があまりにもありすぎて戸惑ってばかりでした。でも、だんだん慣れてくると、ポストプレーは出せるようになってきたし、通用する自信も出てきた。でも、まだ本当に自分のプレーができているかと言われたら、そうではありません」

 筑波大戦後のミックスゾーンで話すと、自身の現状をこう口にした。彼の言うように、まだ『ターゲットマン』の要素が強すぎて、本来持っている一発の裏への抜け出しからのシュートや、スルーパスから抜け出してのシュートというシーンはなく、足もとやハイボールが多く、DFを背負いながら処理するというプレーが目立った。

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