エスパ乾貴士に吹っ飛ばされて――大学とプロで二足の草鞋を履く関口凱心、ほろ苦すぎるデビュー戦で得た経験

2023年05月04日 安藤隆人

まさかの右SBでJデビュー

山梨学院大で主将を務める関口。複数のポジションをハイレベルにこなすマルチロールだ。写真:安藤隆人

「この選手は一体どこがメインポジションなんだろう」

 高校時代からそう思っていた選手が、大学でも、ついにはプロでも同じ印象を抱く選手になっていた。

 山梨学院大のDF関口凱心は、24年の大宮アルディージャ入りが内定しており、今季は特別指定選手として、J2第11節の清水エスパルスでJリーグデビューをスタメンで飾った。

 この試合、NACK5スタジアム大宮に取材に行っていた筆者は、スタメン出場に驚いただけではなく、ピッチに散らばると右サイドバックのポジションに入ったことで二度驚いた。

 西武台高時代、関口は181センチのサイズを持ち、CB、ボランチ、トップ下、FWとセントラルポジションならどこでも器用にこなす選手だった。1対1に強く、かつスピードもある。CBとボランチでは対人能力の高さ、危機察知能力を発揮し、トップ下、FWではスピードを武器に仕掛けていく。

 山梨学院大に進むと、1年時からレギュラーを獲得。この時はCBとして固定されており、「このままCBで行くのか」と思っていた。だが、2年になるとボランチ、インサイドハーフなどで起用されるようになった。
 
 最高学年となった今年はボランチとしてのプレーが多くなっていたが、清水戦で関口に与えられたポジションは右サイドバックだった。実は彼にとって右サイドバックは、公式戦では初めてプレーするポジションだった。デビュー戦でいきなりほぼやったことがないポジションで、マッチアップするのは元日本代表の乾貴士。これが前述した驚きの理由だった。

 そして20分、関口はいきなり乾にプロの洗礼を浴びた。乾が左ワイドからの横パスを左中央で受けると、切り返しから右サイドのDF岸本武流へ大きくサイドチェンジ。その時、関口は乾の数メートル前におり、乾から展開されたボールを見ていた。

 すると岸本がワントラップからインカーブのクロスを上げ、そのボールがファーサイドの関口の元に飛んできた。ヘディングでクリアしようとした瞬間、背後から一気に中に入ってきた乾の姿が。

 完全に前に入られてのダイビングヘッドがゴール左隅に突き刺さる。そして関口は自分より小柄な乾に吹っ飛ばされて、倒れながらゴールネットに吸い込まれるボールを見つめることしかできなかった。
【動画】関口が乾に吹っ飛ばされたシーン
 この試合、これが決勝点となって大宮は0-3の完敗を喫した。関口自身も62分に交代を告げられるなど、ほろ苦すぎるデビュー戦だったが、彼がこれで得た経験は非常に大きなものだった。

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