タフなJ3を勝ち抜くためのポイントは? いわてを率いる松原良香のビジョンは明確。理想と現実をどうすり合わせていくか

2023年04月29日 元川悦子

北は八戸から南は沖縄まで

責任の重さを感じつつ、周囲への感謝を忘れない。松原監督が指揮する、いわてはJ3を席巻できるか。(C)IWATE GRULLA MORIOKA

 2月に開幕したJ1、J2と異なり、3月スタートのJ3はここからが本番。5月以降は天皇杯も入ってくるため、日程的に厳しくなる。

 しかも、北は八戸から南は沖縄まで幅広いエリアにクラブが点在するため、移動負担は上のカテゴリーとは比べ物にならないほど大きい。こうした環境・地理的条件を制することも、J3というタフなリーグ勝ち抜くための大きなポイントとなってくる。

 そのあたりは、いわてグルージャ盛岡の松原良香監督も重視する点だ。

「4月16日に奈良クラブの本拠地ロートフィールドならで試合をしましたけど、盛岡より気温が10度以上も高かったんです。こちらは4月下旬になってもネックウォーマーを巻いて練習していますけど、週末に沖縄や九州、四国へ行けば高温多湿で動けないということも起こり得ます。

 これから夏場になれば、その傾向はより強まるでしょう。食事のタイミングや内容、水分摂取など様々な対策を講じていくことが必要不可欠ですが、それ以上に選手改革が大事。『暑いなかでもタフに走れる』『運動量で敵を凌駕できる』というマインドを持てるように、日々のトレーニングから意識づけをしていくことが重要になってくると思います」と、松原監督は強調する。

 選手層が分厚くなれば、過酷な夏場も余裕を持って戦えるようになる。それも指揮官が取り組んでいる部分だ。現時点では20人くらいのメンバーで回している状況だが、若い選手を伸ばし、戦力として計算できるようになれば、もっと余裕が出てくるはずだ。

「4月になって右サイドバックの石田峻真が怪我をしたので、そこで宮市剛を起用したところ、良いハードワークを見せてくれましたが、選手個々にはそれぞれポテンシャルがある。それを引き出しつつ、チームとして常にアグレッシブにインテンシティの高い状態で戦い続けられるようにするのが自分の仕事なんです。

 今後、コンディションが整わなかったり、怪我人も出るでしょうけど、それで戦えないというのでは、どうしようもない。みんなにチャンスを与えながら、レベルアップしていければ理想的。それが順位を上げるカギになると思います」
 
 そのうえで、コンスタントに得点を取っていくことが肝要だ。目下、いわての得点源となっているのは、3ゴールの和田昌士と宮市、2得点のクリスチアーノだが、アタッカー陣の決定力はまだまだ物足りないと指揮官は考えている。

「昇格できるクラブには必ずと言っていいほどセンターフォワードの得点源がいる。昨季のいわきにも有田稜がいました。でも今のウチはクリスチアーノがまだ2点ですし、ドウグラス・オリヴェイラは無得点。そこを何としても引き上げていく必要があります。

 彼らは試合でも良いポジションが取れるようになってきていますし、鋭いタイミングでゴール前に入っていますが、結果に結びついていない。流れのなかで点を取るパターンをトレーニングしていますが、一つ決めれば形となり自信が持てる。そうなるように全体練習後の自主トレでもこだわって指導しています。

 僕もかつてフォワードでしたし、筑波大学大学院でフォワードの論文も書いた。その経験も活かして、点の取れるフォワードを早く作りたいですね」

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