【ブンデス現地コラム】完全開花したオーバメヤン。ベストの移籍先は!?

2015年12月10日 中野吉之伴

ウイングでのプレーには窮屈さを感じていた。

15試合で17得点と絶好調のオーバメヤン。2位レバンドフスキに3ゴール差をつけ、得点ランクのトップを快走する。(C)Getty Images

 ブンデスリーガ15節終了時点で17ゴールを挙げ、得点王争いのトップに立つドルトムントのピエール=エメリク・オーバメヤン。加入1年目の一昨シーズンは13ゴール、2年目は16ゴールとコンスタントにネットを揺らし、そして今シーズンはついにスコアラーとして完全開花した印象だ。

 30メートル走ならウサイン・ボルトよりも速いという逸話を持つオーバメヤンの最大の武器は、もちろんスピードだ。そのストロングポイントを活かすには比較的スペースのあるサイドに置くというのは、おそらくどの監督も考えることだろう。実際、ユルゲン・クルップ(現リバプール監督)の下でプレーしたドルトムントでの1年目は、ウイングで起用される機会が多かった。

 しかし、オーバメヤンはタッチライン際でのプレーに窮屈さを感じていた。「一番やりたいのはセンターフォワード。中央ならゴールに向かうだけじゃなく、右にも左にも飛び出せるからね。サイドだと縦方向にしか動けないから、プレーの幅が狭まってしまうんだ」とクラブの公式ホームページで語っていた。

 そうした本人の希望を知りながらも、クロップ監督はサイドでの起用にこだわった。本格的にCFで使うようになったのは、昨シーズンのフライブルク戦(ブンデスリーガ20節)からだ。ロベルト・レバンドフスキの後釜として獲得したチーロ・インモービレ(現セビージャ)が全くフィットせず、指揮官はついにオーバメヤンのコンバートに踏み切ったのである。

 この試合でオーバメヤンは2ゴールを挙げ、降格圏に沈んでいたチームに貴重な勝点3をもたらした。その後も得点を量産し、7位でのフィニッシュに大きく貢献。クロップがもう少し早くオーバメヤンのCF起用を決断していれば、もっと上の順位でシーズンを終えられたかもしれない。

 ただ、苦手意識のあったサイドでのプレーを経験したからこそ、今シーズンの覚醒があったという見方もできる。とりわけ劇的に改善されているクロスに飛び込む感覚は"出し手"だったそのときに養われたもので、ゴール量産の大きな拠り所となっている。

 クロップの後を引き継いだトーマス・トゥヘル監督は、サイドに流れがちなオーバメヤンの癖を利用し、空いた中央のスペースを他の選手が活用する新たな崩しのパターンを確立。両翼のマルコ・ロイスとヘンリク・ムヒタリアンや攻撃的MFの香川真司だけでなく、ときにはSBも積極的にゴール前に顔を出す。攻撃のバリエーションが増えたことで敵のマークが分散し、結果的にオーバメヤンの得点アップにも繋がった。

 チームメイトとの良好な関係も、好調を支える要因のひとつだろう。とくにロイスとは「まるで兄弟のよう」と互いに認めるほど親密な関係だ。
 

次ページ元同僚とサンチャゴ・ベルナベウを沸かせる日も。

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