ベルギー2部デインズの飯塚晃央CSOが描く“世界戦略”。スペイン4部クラブ買収の意図とは?「違う国のサッカーを経験させられる」

2023年04月11日 中田徹

「異なる国で複数のクラブを持つとバリエーションが増えていきます」

デインズのCSOとACAFPのCOOを兼務する飯塚氏。写真:中田徹

 マンチェスター・シティを基幹クラブとするシティ・フットボールグループが、横浜F・マリノスなど世界中のクラブを傘下に置いている。このように、一つの経営母体が複数のサッカークラブを運営する「マルチクラブ・オーナーシップ」という形態がサッカー界で広まっている。

 ACAフットボール・パートナーズ(小野寛幸CEO。シンガポール。以下ACAFP)が睨むのもまさにそれ。2022年2月には基幹クラブとしてデインズ(ベルギー2部リーグ)を買収し、第2陣として今年2月にはトレモリーノスCF(スペイン4部リーグ)の買収合意がリリースされた。ACAFPのホームページにはこの2クラブのクラブエンブレムの横に2枠ほど「Coming soon」という表示がある。遅かれ早かれ、その枠が埋まっていくことだろう。

 デインズのCSO(最高戦略責任者)とACAFPのCOO(最高執行責任者)を兼ねる飯塚晃央氏は、マルチクラブ・オーナーシップ戦略に於けるトレモリーノス買収の意図をこう語る。
 
「デインズではU-18までがユース、U-21がセカンドチームになります。本来ならファーストチームに繋がる若い選手たちに18歳から23歳まで継続的にプレーできる環境とチャンスが必要です。そんな彼らに適しているのがスペイン4部リーグだと思います。スペイン3部のレベルが、ベルギー2部、オランダ2部、ポルトガル2部くらいの感覚です。スペイン4部はそこより落ちますが、リーグとしての競争力は高く、サッカーのレベルは高すぎず低すぎずというもの。外国人枠が無く、我々の国際ネットワークで集めた選手たちの研鑽の場、成長の場として活用しやすい。

 トレモリーノスはデインズと同じサッカーをする訳ではありません。(トレモリーノスのある)マラガエリアにはその地域のサッカーが、トレモリーノスにはクラブとしてのサッカーがありますからね。すでにデインズから21歳のルソー(デ・ポールター。元ベルギー年代別代表)というハイチの国籍を持った選手がローンで加入してます。
 
 若い選手の出場機会確保に関して、同じような悩みを抱えるJ1クラブの場合、ローンする先は主にJ2、J3のクラブになりますが、『出場試合数の確保や、レベルの違いに選手育成の難しさがある』とJクラブの方々からも聞いています。我々は複数の国のクラブを使うことによって、ローン先の幅を広げ、違う国のフットボールを経験させることができます。1クラブだけだと選手登録の数に限りがありますが、異なる国で複数のクラブを持つとバリエーションが増えていきます」
 

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