【指揮官コラム】特別編 三浦泰年の『情熱地泰』|サッカー界における「居心地の良さ」とは?

2015年12月03日 サッカーダイジェスト編集部

居心地の良い環境とはなにをもたらしてくれるのか。

多くの選手、スタッフを束ね、チームを勝利に導かねばならない監督という職業は、厳しさや理不尽といった居心地の悪さも想定してチームを作らなければならない。(C) SOCCER DIGEST

 居心地の良い女性とは、都合の良い女性というわけではない――。
 
 いきなり、なんの教訓話だと思われただろうが、要はこれをサッカー界の図式に当てはめると、選手たちにとって居心地の良いクラブ・チームとは、必ずしも自分に都合の良い環境というわけではない、ということだ。
 
 では居心地の良いクラブやチームとは、どんな条件を備えた環境を指すのか?
 
 僕は、居心地の良い環境=成長を実感できる環境だと考えている。チームや選手に対する愛に溢れ、自分に厳しいことを言ってくれる人がいる。そんな環境こそが本当の意味で「居心地の良さ」をもたらしてくれるのではないか。
 
 一方で意図的に居心地の悪い環境を作ることも必要だ。これはサッカーの指導者として僕が意識していることでもある。それは、『試合より厳しい環境を作り上げる』ということだ。
 
 予想していないことが起こるスポーツに、居心地の良さだけを想定した準備をしていたら、大事な時に弱さが出る。ある人は選手を気持ちよくピッチに立たせようと考えるだろう。だからこそ、監督は居心地の定義を作り、ピンチや失点、ビハインドといった苦しい状況をクリアできる環境を「居心地の良い」環境としなければいけない。
 
 人間関係においても、例えば仕事のパートナーとして、自分に都合の良い相手ばかりでは、成長は望むべくもないだろう。都合の良い人と居心地の良い人は、やはり違う。
 
 友達ではいけないし、イエスマンではいけない。やり辛いかもしれない、面倒くさいかもしれないが、時として敵対する関係が人を育てることもあるのだ。
 
 居心地の悪い奴、面倒くさい人間は徹底的に排除し、自分の居心地の良さばかりを求めていこうとすれば、そこにもはや成長はないだろう。未来は暗いモノにならざるを得ない。厳しさや理不尽さも含めて居心地だと思えた時に成長が生まれ、本当の強さを持てるはずだ。それがプロのサッカー界での居心地の良さなのである。
 
 

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