育成プロジェクトから大学経由のプロ第1号! 立命館大のMF中野瑠馬はいかにして京都内定を勝ち取ったのか

2023年03月30日 森田将義

コロナ禍の影響もありU-18からの昇格は見送りに

2025年シーズンからの京都加入が内定した立命館大の中野。写真:森田将義

 2006年から京都サンガF.C.が世界水準のサッカー選手を育成するために京セラ株式会社、学校法人立命館とともに取り組んでいるのが、「スカラーアスリートプロジェクト」だ。

 これまで、元日本代表のFW久保裕也(FCシンシナティ/アメリカ)やMF奥川雅也(ビーレフェルト/ドイツ)らが、学校法人立命館が運営する立命館宇治高に通いながら京都U-18でプレーし、サッカー選手として羽ばたいた。

 現在、トップチームで主力を張るGK若原智哉、DF麻田将吾、MF川﨑颯太も京都U-18出身で、スカラーアスリートプロジェクトはクラブの大きな柱となっている。

 一方で昇格を果たせず、立命館大へと進んだ選手がトップチームに戻った例は一度もなかったが、この3月に第1号となる選手が生まれた。今春から立命館大の3年生となるMF中野瑠馬だ。

 2025年シーズンからの新加入選手だが、今季から特別指定選手に登録され、ルヴァンカップのグループステージ第1節、ガンバ大阪戦では試合終盤に途中出場し、初めてプロのピッチに立った。
 
 持ち味であるスピードを活かしたドリブルと抜け出しは、京都U-18時代から評価されてきた実力者で、昇格候補の1人だったが、高3になったのは新型コロナウイルスが猛威を振るっていたタイミング。トップチームへの練習参加ができず、プレーを見極める場でもある高円宮杯プレミアリーグも中止となり、関西勢との対戦のみとなった。評価材料が少ないなかでトップチームへと上げる判断は難しく、選手のためにならない可能性もあるため、最終ジャッジで昇格を見送ることになった。

 だが、この年の冬に京都は曺貴裁監督を迎え、チームが攻守ともに仕掛け続けるアグレッシブなサッカーへと舵を切ったのは、中野にとっても大きかった。獲得にあたった中山博貴スカウトはこう話す。
 
「曺さんのサッカーは攻撃だけでもダメだし、守備だけでもダメ。選手には攻守両面が求められる。アグレッシブなサッカーをやっていくなかでは、(中野の)攻守両面での連続性は合うと思ったので、大学に進んでからも継続して見させてもらっていた」

 大学1年目は11試合で4ゴールに留まったが、2年目の昨年は「ゴールに関わろうという意識が強まった」(中野)。これまではサイドに張るポジショニングが多かったものの、ゴールにできるだけ近い位置取りをするため、中央でのプレーも増加。ショートカウンターで上手く持ち味が出せる場面も多く、リーグ戦で得点ランキング3位となる13ゴールをマークし、今年に入ってからは関西選抜にも選ばれた。

 もともとチームスタイルに合致すると踏んでいた選手が大学で活躍すれば、古巣が動かないわけがない。今年1月に京都が始動したタイミングで3日間の練習参加に呼び寄せ、沖縄キャンプにも招待。曺監督らコーチングスタッフからも高い評価を得た。
 

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