生涯スポーツとして注目される“歩くサッカー”が面白い!「走る」「ヘディング」などが禁止の独特すぎるルールにも注目

2023年03月12日 河野 正

発祥の地イングランドでは6万人以上がプレー

歩くサッカーは女性の愛好者も増えてきた。右端は連盟の桑田丹理事長。写真:河野正

 走ることもヘディングすることも、相手ボールを奪うこともできないウォーキングサッカーは、名称通り歩きながらプレーする競技だ。日本サッカー協会が誰にでも気軽に楽しめる生涯スポーツとして普及に努めたこともあり、ここ数年で国内の愛好者、競技者は増えつつある。

 日本協会によるとイングランド発祥のウォーキングサッカーは2011年7月、55歳以上の高齢者を対象にした健康増進のための催しが原点という。イングランドでは6万人以上に親しまれる人気スポーツに発展した。

 国内初となる歩くサッカーの全国大会「ペンギンズカップ」が18年2月に日本ウォーキング・フットボール連盟によって開催され、その第6回大会が3月11日、さいたま市の田中電気グラウンドで行なわれた。これまでの会場は体育館や人工芝グラウンドだったが、今回初めて天然芝のピッチを使用した。

 日本協会技術委員会は歩くサッカーの認知と普及のため、①サッカー経験や障がいの有無に関係なく誰でも参加できる、②全員がプレーを楽しめる、③怪我をしない、させないことに最大限配慮する、という三本柱をベースに昨年4月、独自の推奨ルールを設けた。

 主な禁止事項は走る、ヘディングする、相手にスライディングやチャージを仕掛ける、敵の保持するボールを奪う、1,2メートルを超える高さでボールを扱う、といったものだ。高齢者でも障がい者でも安心、安全に楽しめるスポーツとして普及させたい思いから、相手と接触しないことを最優先に考えたルール作りに苦心した。

 ピッチは縦30メートル、横20メール。6人制の10分ハーフで争い、再入場を含めて交代は自由だ。オフサイドはない。

 6分ハーフで行なわれた今大会には11チームが参加し、タイトルを争うコンペティション部門は、予選リーグ2位のロクO-40が同1位の浦和JYを0-0からのPK戦の末、2-1で破って初優勝した。
 
 メンバーは全員40歳以上で、普段はシニアリーグに所属。歩くサッカーはこの日が初体験だったそうで、主将の松倉慎吾さん(50歳)は「想像していた以上に楽しくて、ずっと続けたくなりました。相手ボールを奪えないので、周りが動かないとパスがつながりませんね。来年は連覇を狙いたい」と笑顔で話した。

 競技歴4年目、女性で最年長参加の尾花美代子さん(65歳)は「天気も良くて終日楽しめました。少しずつですが、パスをもらうにはどう動けばいいのか分かってきた。もっと上手くなりたいですね」と語る。

 まもなく80歳になる藤井淸永さんは、浦和高校サッカー部で犬飼基昭・日本サッカー協会元会長の1学年後輩だ。日常的に歩くサッカーと普通のサッカーを並行して楽しんでいるそうで、「勝負にこだわらず和やかにボールを親しめるのが、ウォーキングサッカーの最大の魅力ですね」と述べ、現在80歳以上のリーグ創設の準備をしているという。

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