「なぜか注目されないが…」鮮烈弾の久保建英、ソシエダ番記者が激賞した“ゴラッソ以外”の貢献「タケには『死んだ時間』が存在しない」【現地発】

2023年02月18日 ミケル・レカルデ

剣士顔負けの闘争心を持ってプレーする

ゴラッソ以外もオウンゴール誘発など見せ場を作り出した久保。(C)Getty Images

 2011年夏、アスレチック・ビルバオと契約する前に、マルセロ・ビエルサはレアル・ソシエダからも監督就任のオファーを受けていた。エキセントリックな性格の持ち主の彼らしく、トップチームとカンテラの各カテゴリーのチームのビデオをむさぼるように見た後、丁重にオファーを断ったという。一部ではその際にビエルサは「ソシエダには悲しい月曜日が多すぎる」という言葉を口にしたと伝えられる。

 その後、ビエルサはビルバオで確固たる足跡を残したが、仮にいまソシエダからアプローチを受けたら、きっと考え直すだろう。

「Los lunes al sol」(月曜日にひなたぼっこ)は、フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督の名作だ。ビーゴで起こった産業再編とリストラを巡る大規模なデモの数年後の話で、その日その日を凌ぐのが精一杯の失業者の生活がどんどん悪化していく様子が描かれる。仕事はなく、月曜日になっても日光の下で横たわるくらいのことしかない、それがタイトルの由来でもある。
 
 タケ・クボ(久保建英)とその仲間にとっては無縁の世界だ。ソシエダイレブンは再びオーバーオールを身にまとい、成功者であることを証明した。タケは、どんな日であろうとも、例えば今節のエスパニョール戦のように憂鬱な月曜日の肌寒い夜であろうとも関係ない。袖をたくし上げ、ピッチ上のあらゆるところに顔を出し、遭遇するすべての決闘に挑む剣士顔負けの闘争心を持ってプレーする。

 彼の辞書には、「死んだ時間」というものは存在しない。ポジションは理論上はサイドに張り付く右ウイングだが、中央はもちろん、逆サイドにも顔を出す。さらになぜかクローズアップされることは少ないが、電光石火の勢いでプレスに奔走し、相手からボールを奪うスキルもまた賞賛に値する。

 ソシエダは前節、ホームでバジャドリーに不覚を喫した(0-1)。これ以上疑心暗鬼に陥らないために取りこぼしを避けたかった。しかし試合はエスパニョールのホームゲーム。月曜日開催で試合まで期間が空いたことも嫌な予感が漂う要因だった。

 しかしソシエダは、その苦戦が予想された一戦で、パーソナリティ、ハート、自信、クオリティに溢れたパフォーマンスを披露。63分にリードを3点に広げた後、ブレーキを踏んでしまい終盤立て続けに失点したことは反省材料だが、貴重な勝点3を手にした。

【動画】見事なトラップから強烈な左足ボレー!久保が決めた圧巻のゴラッソ!

次ページ「同情して、僕の得点としてカウントしてくれないかな」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事