“弾丸1トップ”前田大然は、三笘薫の映像もチェック!「どうしてやらないんだ」恩人の助言で開眼、ドリブルでも魅せる男に【現地発】

2023年02月10日 元川悦子

元豪州代表のコーチがアドバイス

スコットランドで躍動する前田。得点とアシスト、両方で二桁を目ざす。写真:元川悦子

 2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)で、グループステージのドイツ戦とスペイン戦、ラウンド・オブ16のクロアチア戦、それぞれのゲームで最前線で先発し、驚異的なスプリントと「鬼プレス」で相手を恐怖に陥れた前田大然(セルティック)。ご存じの通り、クロアチア戦では値千金のゴールも奪っている。

 その大仕事が勝利につながらず、ベスト8という新たな景色を見られなかったのは本当に残念だったが、松本時代の恩師でもある日本サッカー協会の反町康治技術委員長も「大然の2度追い、3度追いが『前から行くぞ』というメッセージになった」と、大会を通しての献身的な姿勢を高く評価していた。

 そんな前田だが、クラブでは昨年12月17日のアバディーン戦でスタメン出場し、いち早く今季の後半戦をスタート。それから早くも2か月近くが経過しようとしている。後半戦のゴールこそ3点にとどまっているが、今の彼は日本代表における"弾丸1トップ"とは異なり、「左サイドのチャンスメーカー」として異彩を放っているのだ。

 劇的な変貌の背景には、1人の恩人との出会いがあったという。
 
「ちょうど1年前にセルティックに来たんですけど、最初は全く仕掛けなかった。今季に入ってからも仕掛けやドリブルとか、そういうタイプじゃなかったんです。

 だけど、今季から来たコーチのハリー・キューウェルが『お前は足が速いのに何で仕掛けないんだ』『どうしてやらないんだ』と言い始めた。ワールドカップ前くらいから毎試合後、個人ミーティングを始めて、自主練も付き添ってもらうようになったんです。

 それからは自分も変わりましたね。『ミスしてもいいからどんどんチャレンジしろ』『とにかくいったん仕掛けろ。ムリやったら下げていい』みたいなことを言われるようになって、どんどんドリブルで打開するようになりました」

 キューウェルといえば、現役時代はリーズやリバプールで一世を風靡し、オーストラリア代表でも2006年ドイツ、2010年南アフリカの両W杯でも活躍した左利きのテクニシャン。打開力にも秀でたアタッカーだった。スプリント能力に長けた韋駄天FWをドリブラーに改造しようとしたのは、自身の経験値を踏まえてのことではないか。

 確かに「オフ・ザ・ボール」で勝負できるだけでなく、「オン・ザ・ボール」でも違いを見せられるようになれれば、前田は一段階、二段階、大きく飛躍できる。そう確信して、指導者になった元オーストラリア代表FWは新たなアプローチを試みたのだろう。
 

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