【日本代表】香川にゴールを期待するのはナンセンス。ドルトムントでのプレーを検証し、背番号10の活かし方を探る

2015年11月11日 清水英斗

「ゴールを決めてナンボ」は、もう過去の話。香川の評価軸は変わった。

香川のプレーの質は、1月のアジアカップ時から高かった。今はトゥヘル監督の戦術にバッチリかみ合い、好調が“絶好調”になった印象だ (C)Getty Images

 11月8日に行なわれたドルトムント対シャルケのルールダービーで、香川は先制ゴールを挙げ、3-2の勝利に貢献した。ヘディングで決めたこと自体も珍しいが、その内容も、相手DFに競り勝って頭で叩き込むという、香川らしからぬパワフルなゴールだった。
 
【写真】シンガポール戦&カンボジア戦に向けた日本代表23人

「香川、最近調子いいね」
 
 しかし、この評価は、半分正しく、半分は間違っている。
 
 昨季の後半戦、少なくとも今年1月のアジアカップの時点で、すでに香川のコンディションは上向き、プレーの質も高かった。そして今季は、トゥヘル監督が指揮するドルトムントの戦術にバッチリかみ合い、好調が"絶好調"になった。そんな状況である。
 
 首を傾げるのは、「香川はゴールを決めてナンボ」と思い込むひとだろう。だが、それはもう過去の話。すでに香川の評価軸は変わった。
 
 ドルトムントでは、ゴールゲッターではなく、状況をガラッと一変させるパサー、魔法使いとして新境地を切り開いた。ブンデスリーガ12試合で3ゴールという平凡な得点率だが、香川の中盤を活性化させるプレーぶりは高く評価されている。そして筆者も、これが香川というプレーヤーの生来の姿だと感じる。
 
 ところが、その生来の姿はドルトムント限定のもので、日本代表ではそれほど認識されていない。そこに、12日のアウェーのシンガポール戦で圧勝するためのポイントが隠されている。
 
 ドルトムントと、日本代表の違いはなにか?
 
 もちろん、FWの差はある。ムヒタリアン、オーバメヤン、ロイスが並び立つドルトムントのアタッカー陣は、スキル、スピードともに世界トップレベルだ。そして、彼らの鋭い飛び出しに、香川はぴたりとパスを合わせられる。彼らがマークされれば、香川が飛び出し、リターンパスをもらう。活かし、活かされる関係は、かなり成熟してきた。
 
 この点について、日本代表との差は大きいが、とはいえ、シンガポール戦で重要な焦点となるのは、ここではない。シンガポールはホームとはいえ、やはり基本的には引いて守る戦術がベースになると予想される。守りを固められれば、直線的な速さで点を決めるシチュエーションは限定される。
 
 そこで重要になるのは、『ギンタールート』だ。

次ページ肝になるのは右SBの動き。『ヒロキルート』が開通すれば…。

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