所属チーム、定位置、ゴール、そしてW杯も失ったC・ロナウド。世界中のファンに見送られるはずだったスターは最後まで“俺様”だった

2022年12月17日 エル・パイス紙

メッシとは明暗が分かれる形に

モロッコに敗れ、孤独にピッチを去ったC・ロナウド。(C)Getty Images

 モロッコ戦敗退後、クリスティアーノ・ロナウドを見て抱いたのは、ひょっとして彼は自分の中に潜むもう1人のC・ロナウドと一緒にアル・トゥマーマ・スタジアムのピッチを後にしていたのではないかということだ。それほど自分以外のことに関わりを持ちたくなかった様子だった。

 打ちひしがれたチームメイトを慰めることも、モロッコの選手を祝福することもなかった。失意のCR7は、CR7のために泣きながらドレッシングルームに引き揚げていった。

 その道中、常にエゴのメーターを最大スケール値に設定しているトッププレーヤーは、敗退以外のことも反芻していたはずだ。彼を苦しませていたのは、マンチェスター・ユナイテッドに居場所がなくなったこと。現在37歳で、再びワールドカップの舞台に立つのは難しいこと。控え選手としてその最後になるであろうカタール大会に別れを告げなければならなかったこと。ようはCR7を失ったことだったろう。

 サッカー史に宝石のような足跡を残した偉大な選手に相応しくない去り方だったのは間違いない。W杯通算ゴールは8にとどまり、9ゴールでポルトガル代表における記録保持者のエウゼビオ超えを果たすことはできなかった。
 
 W杯の決勝トーナメントでは無得点というジンクスを打ち破ることもできなかった。最大のライバル、リオネル・メッシがプレーするアルゼンチン代表は決勝に駒を進め、明暗が分かれる形となった。

 CR7が感情を発露した姿は、今世紀最高のスーパースターの1人の人間らしい一面を白日の下に晒した。ユベントスとマンチェスター・Uを続けてケンカ別れのような形で出て行ったように、カタールでの活躍を疑問視する声は当初から出ていた。

 結局のところ、キャリアの黄昏時に差し掛かっている自身の身体の声に耳を傾け、その現実を心の内に取り入れるという偉大なスポーツマンにとって最も難易度の高いゴールをクリスティアーノは決めることができなかった。天才的なプレーヤーであるCR7と、複雑に入り組んだサッカーは、もはや相容れることはなかった。

【画像】スタメン落ちでまさかの敗戦…試合後に号泣するC・ロナウド

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