【セリエA現地コラム】「イタリア的リアリズム」に根差したスタイルで結果を残すインテル

2015年11月05日 片野道郎

7勝のうち6試合が「ウノ・ゼロ」という堅固さ。

ローマとの大一番で決勝ゴールを挙げたメデル(左)。ミランダ(右)とともにインテルの堅守を支えるキーマンだ。(C)Getty Images

 開幕5連勝の後、9月27日のフィオレンティーナ戦(セリエA6節)で1-4の完敗を喫したインテルは、そこから3戦連続ドローと一気にペースダウン。その間に首位の座を明け渡した。
 
 しかし、10月27日のボローニャ戦(10節)、その4日後の首位ローマとの直接対決(11節)にいずれも1-0で勝利。フィオレンティーナと勝点24で並び、首位タイに返り咲いた。
 
 これで7勝のうち6試合が「ウノ・ゼロ(1-0)」。総得点11はなんとリーグ13位タイと、首位に立っているのが信じられないような数字である。
 
 それを補っているのは、「水も漏らさぬ」という言葉がぴったりの圧倒的な堅守だ。ここまでリーグ最少の7失点。4点を献上したフィオレンティーナ戦を除けば、10試合でわずか3点しか与えていない。
 
 昨年11月に就任したロベルト・マンチーニ監督は昨シーズン、「スクデットを争う」と豪語しながら8位に終わり、ヨーロッパリーグ出場権すら獲得できなかった。チャンピオンズ・リーグ(CL)出場権(3位以内)を絶対的なノルマとして課された今シーズンは、それに見合った大型補強をクラブに要求しつつ、ピッチ上ではとにかく結果にこだわる采配に徹してきた。
 
 CBには、ミランダとジェイソン・ムリージョという高い対人能力とスピード、闘争心、そしてつまらないミスを滅多にしない集中力を備えた新戦力2人を配置。その前をフェリペ・メロとガリー・メデルという武闘派がカバーする中央の守りは、相手FWにシュートを打たせないどころか、ボールにすらほとんど触らせない堅固さを誇っている。
 
 開幕時は4-3-1-2でスタートしたシステムは、最近では相手や状況に合わせて4-3-3や4-2-3-1を使い分けるようになっている。だが、実質はいずれもほぼ4-5-1だ。
 
 左右のウイングに入るイバン・ペリシッチやフレディ・グアリン、アデム・リャイッチ、マルセロ・ブロゾビッチは、守備の局面になると自陣深くまで帰陣。SBと連携したボール奪取はもちろん、逆サイドにボールがある時に最終ラインに加わってスペースを埋める動きをしばしば見せる。
 
 その献身的なプレーぶりは、ジョゼ・モウリーニョ監督の下でCL、セリエA、コッパ・イタリアの「トリプレッタ(三冠)」を達成した時のサミュエル・エトーとゴラン・パンデフを彷彿させる。
 
 常に8~9人を自陣に戻してコンパクトな2ラインを敷き、そのうえ戦術的な連携がしっかり取れている今のインテルのディフェンスを崩すのは、どんなチームにとっても極めて困難な仕事である。

次ページ昨シーズンの得点王イカルディの低調な数字もいわば「想定内」だ。

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