【ブンデス現地コラム】「清武+ツィーラー+9人の労働者」――ハノーファーが見つけた勝利の方程式

2015年11月05日 中野吉之伴

トップ下に君臨し、攻撃の全権を握る。

8試合で2得点・4アシストと決定的な仕事を連発している清武。いまやチームの大黒柱だ。(C)Getty Images

 日本代表の清武弘嗣が所属するハノーファーは、ブンデスリーガ第11節のハンブルク戦(11月1日)を2-1でモノにし、今シーズン3勝目を挙げた。7節終了時点では2分け5敗と最下位に沈みながら、ここ4試合で勝点9を荒稼ぎし、順位も14位までジャンプアップ。急浮上した要因はどこにあるのだろうか。
 
「フロンツェック、勝利の方程式を見つける」
 
 大衆紙『ビルト』は10月22日付の記事でそう見出しを打ち、ハノーファーの好調を分析。ミヒャエル・フロンツェック監督が見つけ出したその方程式とは、「清武+ツィーラー+9人の労働者」だ。
 
 最後の砦としてGKロン=ロベルト・ツィーラーがゴールマウスを死守し、前線では4-2-3-1のトップ下に君臨する清武が卓越した技術と広い視野で攻撃の全権を担い、残りの9人がその2人を支える。

 乱暴な言い方をすると、「攻撃の大事な部分はすべて清武に丸投げ」。だが、この極端に個に依存した戦術を成り立たせてしまうほど、清武のパフォーマンスは傑出している。
 
 ハノーファーのチームとしての問題点はビルドアップの質で、パスワークで相手のマークを剥すような技術力はない。トップ下の清武は常に敵に囲まれた状態でボールを受けねばらず、ときには中盤の低い位置まで下がってパスを捌いたり、サイドに開いてチャンスメイクに精を出したりして状況の打開を図った。

 しかし、清武がいなくなった分、アタッキングサードでの攻撃力は半減する。そんな悪循環に陥った。
 
 さらに調子が悪いときには、選手それぞれが「自分が何とかしなければ」という強迫観念に駆られてしまうもの。そうした焦りが状況判断を狂わせいく。
 
「真ん中でボールを捌くのが僕しかいない。ただ、サリフ(サネ)はよく僕を見てくれるので、二人で何とか崩そうとしています。そういう意思疎通ができる選手は多ければ、多いほどいい。でも、いまはその人数が足りないというのが現状」
 
 4連敗を喫した5節のアウクスブルク戦後、清武はチームの窮状をそう説明した。

次ページ“清武シフト”導入後、浮上のきっかけを掴む。

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