英国人記者が見た「ラグビーW杯vsフットボール」。イングランドに「フットボール記事」を、ベイルに歓喜をもたらした衝撃の夜

2015年10月27日 スティーブ・マッケンジー

衝撃の敗戦を機にラグビーとフットボールの立場は逆転。

ラグビーW杯では、地元開催で優勝への期待も膨らんだイングランドだが、ウェールズ戦の敗退によってスポーツ報道の比重はフットボールが優勢に。(C) Getty Images

 まだまだ熱戦が続いているラグビー・ワールドカップは、ご存知の通りイングランドで行なわれている。日本は南アフリカ相手に歴史的勝利を挙げ、開催国や母国のみならず、世界中のラグビーファンの心を掴んだ。ワールドカップが日本で高視聴率を叩き出したのは、ここイングランドでも各種メディアで報じられている。
 
 ワールドカップの戦いが幕開けした時、フットボールの新シーズンは1か月を経過していたが、イングランドではラグビーとフットボールのどちらがより人気を集めているかが興味を引いた。大会前、イングランドは地元開催ということもあって、国内には3大会ぶり2度目の優勝へ楽観的なムードが漂っていた。テレビ、新聞、雑誌の大半はラグビー報道で占められ、フットボールは完全に後手に回っていた。
 
 しかしながら、イングランドがグループリーグ突破のために重視されていたウェールズ戦で衝撃的な敗北を喫した(25-28)ことですべてが変わった。この結果は、イングランドのファンやメディアの期待を完全に裏切り、勝ち上がりの可能性が減ったことで、フットボールは再びスポーツ面の上位に舞い戻ったのだ。
 
 当然、どういった類の新聞かによって、どのスポーツにより焦点を当てるのかは異なる。通常、『タイムズ』『テレグラフ』『インディペンデント』のような高級紙は中流階級の人々をターゲットにしており、ラグビーの重要度は高い。
 
 我々が"レッドトップス"と呼ぶ(題字が赤いことにちなむ)『ザ・サン』『デイリー・ミラー』『デイリー・スター』のような大衆紙は、より労働階級に受けの良いフットボールにスポットを当てる。そのため、レッドトップスではウェールズ戦敗退を機に、途端にフットボールの報道記事が増え始めた。
 
 日本ではあの衝撃的な勝利によってラグビー報道も格段に増えたようだが、イングランドではまさに真逆の展開となってしまったわけだ。

次ページあの夜、レアル・マドリーのアタッカーは早々に取材対応を切り上げ…。

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