【セリエA現地コラム】イグアインがモダンなストライカーへ進化中

2015年10月22日 片野道郎

サッリ監督によって新たな活力を吹き込まれた。

首位フィオレンティーナ撃破の立役者となったイグアイン。リーグ戦8試合で6ゴールと好調をキープし、得点ランキングではトップに並んだ。(C)Alberto LINGRIA

 今シーズンのセリエAで、おそらく最もスペクタクルかつ戦術的にハイレベルだった10月18日のナポリ対フィオレンティーナ(8節)。組織的に高い完成度を誇る両チームが緻密な攻防を展開した好ゲームで最後に決定的な違いを作り出したのが、ナポリのアルゼンチン代表FWゴンサロ・イグアインだ。
 
 1-1の同点に追い付かれた直後の75分だった。アグレッシブなプレスでヨシプ・イリチッチからボールを奪うと、ドリース・メルテンスとのワンツーで素早く裏に抜け出し、左足でゴール右隅に流し込んで決勝点をゲット。リーグ戦5連勝中の首位フィオレンティーナから貴重な勝点3を挙げる立役者となった。
 
 R・マドリーから移籍して3シーズン目。過去2シーズンのリーグ戦で計35得点を挙げるなど、ワールドクラスのCFとしての実力は示してきた。だが、絶対的なリーダーとしてチームに重要な結果をもたらすには至らなかったのも事実だ。
 
 昨シーズンは、チャンピオンズ・リーグ(CL)のプレーオフで敗退し、セリエAでも早々にスクデット争いから脱落するなどクラブの成績が低調だったせいもあってか、チームメイトのプレーに不満を露わにして叱責するなどネガティブな振る舞いが目に付いた。
 
さらに、CL出場権を懸けたラツィオとのリーグ最終戦、そしてコパ・アメリカ決勝のチリ戦と大一番で続けてPKを失敗。ショックで大きくモチベーションを落とした今夏には、移籍の噂が絶えなかった。
 
 困難な状況に陥っていたイグアインは、新任のマウリツィオ・サッリ監督によって、新たな活力を吹き込まれた。就任当初から「現在でも世界屈指のセンターフォワードだが、まだまだ大きな伸びしろを残している。持てる潜在能力をすべて発揮すれば世界一のストライカーになれる」と絶対的な信頼を与えられ、代わりにチーム戦術への貢献を要求されたのだ。

次ページユーベ戦のゴールが新たなプレースタイルを象徴。

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