高精度の左足を持つ帝京の181センチSB入江羚介。挫折をバネに関東1部の強豪でプロ入りを目ざす

2022年11月12日 安藤隆人

U-19日本代表候補選出も大怪我で長期離脱

入江は無念の敗退となった國學院久我山戦のラストプレーで、正確なクロスからチャンスを作った。写真:安藤隆人

 選手権東京都A予選準決勝・國學院久我山対帝京の一戦。白熱した試合は、3ー2の國學院久我山の1点リードで後半アディショナルタイムを迎えた。

 同点に追いつくために帝京は最後の攻撃を仕掛けると、味方がつないだボールが左サイドの高い位置で待つDF入江羚介のもとに届いた。入江は自慢の左足をダイレクトで振り抜き、ゴール前に正確なクロスを送り込むと、そこにフリーで飛び込んだのはMF大田知輝。しかし、大田のシュートは枠を捉えきれず、エンドラインを割っていくと、その直後に帝京の敗戦を告げる試合終了のホイッスルが響いた。

「もっと何かできたのかなと悔いが残ります。最後のクロスより前にもっと僕が走っていれば、もっと一歩の寄せが早かったら、もっとボールタッチが正確だったら……。流れを変えられるシーンはいくらでもあった。むしろスタートから出ている選手たちが頑張ってくれていたにもかかわらず、途中出場の僕がもっと頑張っていたら。選手権に懸けていたので、本当に悔しいです」

 試合後、入江は溢れる涙を抑えきれなかった。彼はこの試合で2-2の同点となった後の後半17分に投入された。途中出場でチームに勝利を持っていけなかったことの悔しさもあるが、それ以上に彼が苦しみ抜いたこの1年間が、涙の裏側にあった。
 
 入江は帝京において1年からレギュラーを掴み、プロのスカウトが注目する目玉選手の1人だった。181センチのサイズと精度の高い左足を持つ彼は、大型左サイドバックとして脚光を浴びた。高1の時にU-16日本代表候補に、今年の始めにはU-19日本代表候補にも選ばれた。

 しかし、4月の練習試合で左足首の脱臼骨折と三角靭帯断裂、腓骨骨折という重傷を負い、長期離脱を強いられてしまった。仲間がプリンスリーグ関東を戦うなかで、彼は手術をしてリハビリに励んだ。徳島インターハイも東京に残って通院する毎日だった。

「チームのみんなが頑張っているなかで、僕はチームに向き合うのではなく、怪我と向き合わないといけなかった。本当に孤独でした」

 2回戦で青森山田を破るなど、快進撃を続けるチームをただ1人、ライブ配信で見つめることしかできなかった。

「自分がいないチームがどんどん勝ち上がっていくので、なんかみんなが遠くに行ってしまったような感覚になってしまいました。それが本当に辛くて、正直100%の気持ちで仲間を応援できなかった。でも、そんな自分が情けないと思ったし、何をやっているんだと思った。葛藤ばかりだった」
 

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