数字に表われない家長昭博の凄み。孤高の天才キャラは過去の話。チームメイトが明かす背番号41の変貌と貢献

2022年11月07日 岡島智哉

ボールを預ければ、実際に何とかなっていた

今季のJ1ではチームで唯一の全34試合に出場した家長。貫録のプレーで多くの勝利に貢献した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 36歳・家長昭博の今季のパフォーマンスは圧巻だった。

 J1の得点数は、1位と2差の12点。本人は「一切興味がない」「自分が得点王になったらJリーグがやばい」などとコメントしており、本当に一切興味はなさそうだったのだが、大事な場面でチームを牽引したことは、全34試合出場というものも含めて、しっかりと数字に表われている。

 特に夏場以降、シーズン終盤のラスト15試合で8ゴールを挙げた。右サイドで圧巻のボールキープを見せたかと思えば、中央や左サイドにも顔を出し、クセのあるビルドアップで相手を苦しめ、味方を助けた。

 主力の相次ぐ海外移籍により選手層に課題のあったフロンターレで、獅子奮迅の活躍を見せた。困った時に家長にボールを預ければ、実際に何とかなっていた。鬼木達監督も「彼は別格」と賛辞を惜しまない。

「34試合、12得点・5アシスト」という数字はもちろん素晴らしいのだが、1年間、スタジアムでそのプレーを見続けてきた身としては「いや、本当はもっと凄いんだけどね」という思いになる。

 それは、数字以上のチームへの貢献があり、あるいは華麗なトラップであるとか、巨漢選手との対人を制す様子であるとか、数字には表われない、思わず唸るプレーを何度も見てきたからだろうと思う。
 
 家長、右サイドバックの山根視来とともにフロンターレの右トライアングルを形成する右インサイドハーフの脇坂泰斗は、今シーズンの家長の変化をこう語る。

「ポジションも近いので話すことも多いが、今年はその回数が増えているなと思う。今シーズンはアキさんからの要求が増えた。『こうしてほしい』って要求が、いろいろな局面で例年より増えている」

 試合前だったり、ハーフタイムにベンチへ下がる途中だったり、誰かが痛んで試合が止まっている時だったり。若い選手に声をかけ、時に身ぶり手ぶりを示したり、肩に手を回して語りかけたりする様子は、記者席からもたびたび目撃した。

 家長は「気づいたことは言うようにした。それでもみんなに比べて半分以下ですよ。基本的には静かにやっています」と首をかしげるが、「でも、言う人が(移籍などで)減ったりとかもありますかね。多少ですけど、言わないといけない状況も増えた」とも語る。
 

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