狙った獲物は逃さない――相馬勇紀はいかにしてカタール行きを叶えたのか。妻に誓った「絶対に最後で取り返す」

2022年11月02日 今井雄一朗

プレーが大きくスケールアップ

カタールW杯メンバーに選出された相馬。「1ゴール・1アシスト。結果を持って帰りたい」と意気込む。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 闘志は常に内に秘め、ひたすらに研鑽を重ねてのワールドカップ代表選出だった。

 A代表を、ワールドカップを本気で意識したのは昨年、東京オリンピックの後だったという。4位と悔しい結果に終わったが、高校生の頃から夢見てきた舞台で全試合に出場。しかし大会終了後の最初のA代表招集はなく、ここで相馬勇紀の負けん気に火が点く。

 上田綺世らオリンピック代表の同期が名を連ねるメンバーリストの写真を撮り、自らのスマートフォンに保存。今なおカメラロールに残る"ターニングポイント"で、「絶対に最後で取り返す」と妻に誓った。

 明けてワールドカップイヤーの始まりは、所属する名古屋グランパスがプレシーズンキャンプでコロナ禍に見舞われ、自身もコンディションが整わないまま開幕を迎え、苦しんだ。転機はチームと同じく3バックへのシステム変更で、ウイングバックのポジションを与えられたことでプレーに幅と奥行きが出た。

「どのタイミングでカウンターに出たらいいか、自分が守備をしていて一番されたら嫌なプレー、相手とのラインの駆け引き。どういうやり方をすればワンツーでかわされないようになるとか、ポジションが変わって成長できた」
 
 相馬といえば爆発的なスプリント力を活かしたドリブル突破が最大の武器だが、守備面や駆け引きの部分が身に付いたことで、プレーが大きくスケールアップしたところがある。

 ウイングバックの役割には"副作用"もあり、日本代表では純粋な2列目で起用されることで、より攻撃的に振る舞えるようにもなった。「ウイングバックの経験があるからこそ、そこでまた前よりゴールに近づく回数は増えた」。

 貯め込んだパワーを爆発させるように、7月のE-1選手権では躍動し、3得点で得点王に輝くとともに大会MVPまで受賞。この結果も彼にワールドカップを強く意識させるきっかけだったと言い、その後の9月のヨーロッパ遠征での選出にもつながっていくのだから、彼は少ないチャンスでしっかり結果を残すことで、カタールへの切符を手繰り寄せたと言える。

【PHOTO】ついに決定!カタール・ワールドカップに挑む日本代表26人を一挙紹介!
 

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