【リバプール番記者の提言】クロップ政権の鍵は「中長期的ビジョン」だ

2015年10月15日 ジェームズ・ピアース

いわばドルトムント時代の再現を期待されている。

その手腕に大きな注目が集まっているリバプールのクロップ新監督。記者会見にもこれまで以上に多くのメディアが集まっている。(C)Getty Images

 10月上旬に決断されたブレンダン・ロジャースからユルゲン・クロップへの監督交代に、大半のリバプール・サポーターは満足している。
 
 ファンはクロップが志向する攻撃サッカー、そして何よりもカリスマ性に大きな期待を寄せている。ドルトムントではバイエルンという巨頭と一時は互角以上の戦いを演じ、選手やファンと良好な関係を築いていた。リバプールでも同じような成功が望まれているのだ。
 
 私自身も、クロップはベストの人選だと思っている。たしかにカルロ・アンチェロッティ(クロップの対抗馬と報道されていた)は、幾度となく4大リーグとチャンピオンズ・リーグを勝ち取ってきた稀代の名将だ。しかしながら彼は、過去に率いたミラン、チェルシー、レアル・マドリーのようにビッグネームが揃うクラブでこそ、その能力を最大限に発揮するタイプではないだろうか。
 
 その点、現在のリバプールは、歴史と伝統こそいまだイングランド屈指だが、実際の戦力はお世辞にもビッグクラブとは言い難い。過去5年の成績を見れば、それは明らかだ。獲得したタイトルはわずか1個(11-12シーズンのリーグカップ)で、チャンピオンズ・リーグに出場したのもわずか1度(14-15シーズン)。ここ2年でルイス・スアレス(現バルセロナ)、スティーブン・ジェラード(現LAギャラクシー)、ラヒーム・スターリング(現マンチェスター・C)が退団し、誰もが認めるワールドクラスは現スカッドに一人もいない。
 
 クロップが就任した08年当時のドルトムントもまた、未曽有の低迷期にあり、現在のリバプールと同じく"過去のビッグクラブ"に成り下がっていた。その状況を無名の若手を鍛えながら徐々に改善し、欧州のエリートクラブに返り咲かせた。この実績があるからこそ、サポーターも私たちメディアも、大きな期待を寄せずにはいられないのだ。
 
 新政権の初陣となる10月17日のトッテナム戦を前に、そのボルテージは上がるばかりだ。例えば、あるブックメーカーが算出した「リバプールのプレミアリーグ優勝」の倍率は、ロジャース政権時代が100倍だったのに対して、クロップ就任で一気に30倍にまでなっている。冷静に考えればクレイジーな数字だが、それだけ期待が大きいということだ。
 
 もちろん、クロップは奇跡を起こせる神ではない。とはいえ、スアレスが昨夏に去って以来、チームが失っていたワクワク感と興奮が戻ってきたのはたしかだ。他メディアの番記者たちやリバプール贔屓の解説者たちも、多くが私と同じ気持ちを抱いている。

次ページクロップの意見を吸い上げながらリクルート・ポリシーを変えるべきだ。

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